青野:部下が出してきたアイデアは、山登りにたとえると、登り方の一つだと思うのです。言い換えれば、「私たちが目指しているこの山頂に向かって、私は、こっちから登るのがいいと思います」という意見表明、ということです。それがもし、山頂と全然、関係ない方向に向かって進んでしまうようなアイデアであれば、却下しなくてはいけない。

「それは『この組織』において、やるべきことではない」と。

「この組織」においては、「この山」の山頂を目指してください。この山の登り方にはいろんな手段があって、「正しい登り方」は、私も知らないし、あなたも知らない。だから、互いにいろいろな意見を出していこう。その意見が、この山の山頂に向かわないものであれば、忌憚(きたん)なく指摘し合おう――こういう感覚なんじゃないかと思います。

コーヒー代を請求する社員に対して

岸見:青野社長が監修された本(『「わがまま」がチームを強くする。』)に、営業の社員が外回りで立ち寄った喫茶店で払ったコーヒー代を、会社が支給することにしたときのエピソードがありましたね。あれは、すごく面白いと思いました。

青野:若手の営業社員からの提案で、経費として認めるようになった話ですね。

 彼の言い分は、こうでした。

 「コーヒーを飲みたくてカフェに寄るのではなく、仕事をする机と充電する電源が欲しくて寄っている。だから、業務の一環であり、コーヒー代を経費として認めてほしい」

 それまでは、営業社員の個人負担だったので、先輩の社員たちからすれば「わがままを言うな」というような話かもしれません。

 しかし、そこで「わがままを言うな」というのも、わがままな話で、サイボウズの企業理念は「チームワークあふれる社会を創る」です。この理念に基づいて考えたとき、空き時間を使ってまで、チームワークあふれる社会を創るために頑張っている社員が、コーヒー1杯で、より気持ちよく頑張れるのであれば、安い投資だ、というのが、私たちの結論でした。

岸見:本当に仕事に有用であれば請求してもいいと思うということですね。

 それが面白いと思ったのですが、肝心の目標を見ないで、ただコーヒー代を請求されたのならば、「それはダメだ」ということを、リーダーとしては言わないといけない。

 コーヒー代だったらかわいいものですけれど、経費で、例えば、目に余るほどの飲食代を使って、「自分の仕事には必要なのだ」と、社員が言い出したときには、毅然とした態度で「それは認められない」と言えないと、リーダーとしては失格でしょう。

青野:そうですね。そういうことを、ある意味、互いにチェックし合えるといいと思っています。サイボウズはもう私一人だけで見る規模ではありませんし、そこはやはりオープンにすることで解決していきたい。

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