岸見:今、青野さんがおっしゃったことは、私が「対話」という言葉で強調していることと同じだと思います。一方的に伝えるのでなく、「対話」をしていかないと、結果として間違ってしまうことが多い。

 だから、社長といえども、リーダーといえども、今述べているのは「自分の考え」であることを、絶えず意識しなくてはいけない。

上司であっても「私の考え」にすぎない

岸見:社長が、これは「私の意見」「私の考え」なのだということを、前面に押し出して話し、社員のほうも、これは社長の意見、社長の考えだと思えたなら、反論しやすい。社長の「考え」に反論するのであって、社長を批判するわけではないと思える。

 社員が「お言葉ですが」などと言う必要を感じることなく、「私の意見を言わせてください」と、社長に言えるような雰囲気をつくっていければ、きっと活発な議論ができるでしょう。

 今日は、青野さんの著書を数冊、再読してきました。おそらく、そこで青野さんが繰り返し強調されていた、「この提案は何を目的にしているかを常に見失わない」ということが、大事なのですね。

 そこを見失わないのであれば、「どんな提案でもいい」ということにはなりません。この提案をする、もともとの目標に照らして適当でない、ということを、きちんと言わないといけないですね。

 この点は、リーダーのほうがしっかりと押さえておかないといけないですね。

 部下のほうは自由闊達に議論できる。そして、リーダーが「それはダメだ」というときには、個人を攻撃するのではなく、個別の意見に個別に反論するというのでもなく、「大きな目標に照らしたときに、あなたの考えは採用できない」と、言えないといけない。それはリーダーの才覚です。

青野:その通りだと思います。

青野社長はそのような感覚を持って、社員と議論されているわけですか。

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