青野:「嫌う」というのは、相手が持つ感情ですから、「嫌われないようにする」となれば、相手の感情に思いをはせなければなりません。

 そして、こちらが伝えた言葉を、相手がどのように受け取ったかは、自分が想定したものとは違う可能性がある。岸見先生が前回の話でも、著書でも繰り返し、強調している通りです。

 こちらがばかにしたつもりがなくても、相手は「ばかにされた」と、受け止めていたり、こちらが傷つけるつもりがなかったのに、相手は傷ついているといったりしたことは実際、よくあるものです。

 しかし、リーダーが「嫌われないようにする」と決めたからには、相手がどう受け止めたかを、確認していかなくてはなりません。

「俺の愛情」にまつわる、上司の勘違い

青野:ただ、こういうことをやっていたリーダーというのは、今まで、あまりいなかったと思うのです。

 上司というのは往々にして、部下を叱りつけては、「あいつは俺の愛情を受け止めてくれているに違いない」なんていうことを、一方的に思っているわけです。

 けれど、「嫌われないようにする」と、決めた以上は、部下が本当に愛情と思ってくれているのかどうか、確認しなければならないし、確認してみて、自分の認識と現実の間にズレがあったら、軌道修正しなければなりません。

 それはやっぱり、リーダーにとって、勇気が要ることなのです。

 自ら間違いを探しに出向いていって、間違っていたら、過ちを認めて修正する。これは、なかなか勇気の要ることだ、と、私は思いました。

岸見:「嫌われる勇気」の真意については、こちらの連載の以前の回で、詳述した通りです。強い立場にある上司が「嫌われる勇気を持とう」などと意気込んでも、あまりいいことはありません。

 「嫌われてもいい」と思う上司は、勇気の問題以前に、必要な手続きを省いてしまっているのではないか、と、私は思うのです。

青野:手続きの問題、ですか。対話に時間をかけよう、ということですね。

岸見:その通りです。

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