京セラ名誉会長の稲盛和夫氏とアリババ創業者のジャック・マー氏。ともに今では、その肉声に触れる機会を得にくい名経営者だ。そんな2人が2008年「日経ビジネス」誌上で対談している。

 その内容を3回に分けてお送りしてきたこのシリーズ。第1回では、「企業経営者は常に謙虚であるべき」という考えで一致し、共鳴した2人。第2回では、互いの創業物語に耳を傾け、「ビジョンと使命感で仲間を集めた」という共通点を見いだした。

 最終回の今回は「リーダーが語るべき言葉」について、稲盛氏とマー氏が持論を語り、意見を交換する。苦境のときにリーダーが語るべきこととは何か。1つの企業の下に多様な人々が集まることには、お金もうけを超えた何かがあるはずではないか。

 このたび刊行された、稲盛和夫氏のインタビュー集『稲盛和夫、かく語りき』から抜粋して、お届けする(数字などは、原則として雑誌に掲載した2008年11月当時のもの)。

 どんなに美しい言葉も、そこに魂が宿っていなければ人の心に響かない。トップは常に会社の健康状態に気を配り、危機に際しては全身全霊で社員に語りかけ、不況を次の成長の糧に変えなければならない。そう稲盛氏と馬氏は訴える。米国経済に共に依存してきた日中両国にとって、不況は双方の企業人が理解と交流を深めるチャンスにもなり得る。

語るべき言葉とは「音声」ではない

稲盛和夫(以下、稲盛):言葉というのは、心で思ったことを大脳で整理して、そして音声で伝えることです。しかし、ただ単に心で思ったことを頭で考え、音声にするだけでは、人を説得したり勇気づけたりすることはできません。

 日本の古い言葉で「言霊」というように、言葉に魂を込めなければならない。「自分はこうでなければならんと思う」ということを、信念を持って、言葉に魂を込めて話す。そうしなければ心に響かないし、人は動きません。私は若い頃からそう考えて行動してきました。

 しゃらしゃらと軽い話をするリーダーは嫌いです。訥弁(とつべん)で構わないから、言葉に魂を込めて訴える。今のような厳しい経営環境のときこそ、自分が話すことに対して責任を持つ。命と魂を込めて訴えていくことがとても重要なのです。

<span class="fontBold">稲盛 和夫(いなもり・かずお)</span><br> 1932年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年京都セラミック(現京セラ)を設立。社長、会長を経て、97年から名誉会長。一方、84年に第二電電企画(現 KDDI)を設立し、2001年から最高顧問。また10年、日本航空会長に就任。2年間でV字回復を成し遂げ、12年から名誉会長、15年名誉顧問。中小企業経営者のための 「盛和塾」の塾長として、後進の育成にも心血を注いできた。1984年には稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。人類、社会の進歩発展に貢献した人たちを顕彰する(写真/山田哲也/「日経ビジネス」2008年11月10日号に掲載のカット)
稲盛 和夫(いなもり・かずお)
1932年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年京都セラミック(現京セラ)を設立。社長、会長を経て、97年から名誉会長。一方、84年に第二電電企画(現 KDDI)を設立し、2001年から最高顧問。また10年、日本航空会長に就任。2年間でV字回復を成し遂げ、12年から名誉会長、15年名誉顧問。中小企業経営者のための 「盛和塾」の塾長として、後進の育成にも心血を注いできた。1984年には稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。人類、社会の進歩発展に貢献した人たちを顕彰する(写真/山田哲也/「日経ビジネス」2008年11月10日号に掲載のカット)
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