「自分自身を管理できない人が他人を管理できるわけがない」

お二人は公認会計士です。会計士の視点から、中小企業のコロナ対応をどう見ていますか。

古田圡:環境の変化に応じて商品やサービスを変えていくのが、一倉さんの原則です。そして、変えるために必要なのが資金です。それなのに、無駄使いをしている経営者があまりにも多い。名義だけ奥さんを役員にして高い給料を払ったり、高級な車に乗って節税をしたり。ここをまず改める。

 今、3年や5年、返済を据え置きしてくれ、返済期間も15年と長期に認められています。それも運転資金です。ということは「その間に新しいビジネスモデルをつくりましょう。そのための時間ですよ」と国から言われているようなもの。無駄使いをやめて、お金を借りまくって事業を変えるのです。

佐藤:ドラッカーは「企業が優れている最大の理由は、利益の機能にあるではない。赤字の機能にある」と言っています。社会に貢献できていない事業なら、赤字という、これ以上ない分かりやすさで見えるわけです。

 ところが節税などで赤字額が正確でないと、どれだけ駄目なのかが分からない。あるべき赤字額を把握できないのです。黒字なのに法人税を払いたくないからと、赤字にする会社もある。現実に向き合ってこなかったから改革が進まなかったという面もあるでしょう。その点は、私たち職業会計人も襟を正さなくてはならない。

古田圡:うちは2300社くらいお客様がいますが、黒字なのに赤字にしている会社はないですよ。黒字を少なくするために役員報酬を上げたりするところはあっても、赤字まではしません。赤字になると銀行の評価が大幅に下がり、貸し出し金利も高くなりますから。

佐藤:でも、世の中全体では赤字会社が66%です。3分の2が赤字の国というのは異常です。感覚的には、そのうち1割くらいは黒字にできるのに赤字にしていると私は思っています。

一倉さんは、「世の中の経営書は、その実態は管理技術書ばかりだ」とも憤慨しています。財務数値を正しく把握するのは、数値管理のためではなく、事業戦略のためです。そのあたりの意識転換も必要かもしれません。

古田圡:一倉さんは「能率と効率は別」とも言っていますね。能率はコスト削減のこと。効率は付加価値の増大です。いくらコスト削減や合理化をしても付加価値が下がれば利益は減少します。付加価値の増大を軸に生産性向上を図って利益を極大化するわけです。直接原価計算の知識を身につけて、事業構造を見直せば利益は確実に増える。中小企業経営者はコロナを機会に財務を再度学ぶべきです。

佐藤:管理する対象は、厳密にいえば事業や仕事であって、人ではない。主体者として人はいるのです。一倉さんの本の中に「自分自身を管理できない人が他人を管理できるわけがない」という一節があります。これは、ドラッカーの『経営者の条件』の前書きに書いてあることと同じ。ここからも2人は共通の到達点にいると分かります。人をコントロールするのではなく、自らどうありたいかと主体的に組織に関わらないと、会社はまとまらない。

 テレワークが広まった今、経営理念が浸透していなければ、ばらばらの集団になってしまいます。その点においても、経営理念という原理が必須になるのです。

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理論としては、りっぱであっても、
現実に対処したときには、あまりにも無力である。
現実に役だたぬ理論遊戯にしかすぎないのである。
現実は生きているのだ。そして、たえず動き、成長する。
……打てば響き、切れば血がでるのだ。
(「序にかえて」より)

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