岸見:「そういうものなのだ」と思ってしまうと、人間は何も変えられなくなります。

 私の話を「理想論だ」と言う人は、かなり多いです。「そんなことは、とても無理だ」と言われます。

 でも、理想は、現実と違うから理想なので、現実を追認するだけでは、現実は変えられない。「子どもを叱らない」「部下を叱らない」なんていうことは、無理なのだというふうに、現状を肯定してしまったら、何も変わりません。

ええ、確かにそうですね。

岸見:娘さんはまず、「明らかに前と違うな」と感じられたはずです。このごろのお父さんは、前みたいに、当然のようには怒らなくなったことに気づかれた。それだけでも親子関係は大きく変わっていきます。リーダーと部下の関係でも同じことが起こります。

家庭だけでなく、職場での関係も良くしていきたいと心から思います。

岸見:しかし、「そんなことは、前から知っていた」などと、訳知り顔で言う親や上司がいたら、子どもや部下はどう思うでしょうか。どうでしょうか。

 子どもは、大人の「言っていること」からは学びません。大人の「していること」から学びます。

 だから、行動が伴わなければ、「あの人は、言っていることは立派だけど、やっていることがあれではね」と、冷ややかに見る。

いや、耳が痛いです。

部下との距離を縮めなくていい

岸見:それから、山崎さんが先ほど挙げられた「人付き合いが苦手で内気である」ことと「理想的なリーダーになるのが難しい」ことは、まったく関係ありません。

 距離感を詰める必要は必ずしもないと思います。仕事ですから。仕事において距離感を縮める必要は必ずしもない。そこを過剰に考えると「飲み会に参加しなくてはいけない」というようなプレッシャーになってしまいますよね。

そういう妙なプレッシャー、確かにありますよね。

岸見:仕事は仕事なので、仕事の上での信頼関係を築くことで、距離が縮まる、と言うか、「この上司は信頼するに値するな」と思ったときに、距離はおのずと縮まります。だから、無理に距離を縮めようなどと考える必要はないと、私は思います。

日経BPから『ほめるのをやめよう ― リーダーシップの誤解』を発売しました。

上司であることに自信がないあなただから、
よきリーダーになれる。そのために―

◎ 叱るのをやめよう
◎ ほめるのをやめよう
◎ 部下を勇気づけよう

『嫌われる勇気』の岸見一郎が放つ、脱カリスマのリーダーシップ論

ほぼ日社長・糸井重里氏、推薦。
「リーダー論でおちこみたくなかった。
おちこむ必要はなかったようだ」

●本文より―

◎ リーダーと部下は「対等」であり、リーダーは「力」で部下を率いるのではなく「言葉」によって協力関係を築くことを目指します。

◎ リーダーシップはリーダーと部下との対人関係として成立するのですから、天才であったりカリスマであったりすることは必要ではなく、むしろ民主的なリーダーシップには妨げになるといっていいくらいです。

◎ 率直に言って、民主的なリーダーになるためには時間と手間暇がかかります。しかし、努力は必ず報われます。

◎ 「悪い」リーダーは存在しません。部下との対人関係をどう築けばいいか知らない「下手な」リーダーがいるだけです。

◎ 自分は果たしてリーダーとして適格なのか、よきリーダーであるためにはどうすればいいかを考え抜くことが必要なのです。

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