岸見:今のお話をうかがって申し上げたいのは、「対等の関係を築けていなければ、あらゆる技法は無効である」ということです。
私の主張するような「ほめない」「叱らない」、さらには「部下を勇気づける」といったリーダーシップの手法について、「その通りだ」と納得し、実践いただいたとしても、相手との関係が対等でなければ、すべて操作であり、支配なのです。
逆にいうと、相手との間に対等の関係を築けていれば、何を言っても大丈夫なのです。
青野:なるほど。
岸見:ただ、そこに到達するには、やはり時間がかかります。最初は、気をつけたほうがいいです。「こういう言葉を使うと、相手を傷つけるのではないか」ということを、過剰に気をつけるくらいでちょうどいいと思います。
それがやがて、相手との関係が本当に対等になって、信頼関係ができたなら、周囲で聞いている人が「あんな言い方はないよな」と思うような言い方をしたとしても、部下の勇気をくじくことにはなりません。
親子も「この子には、何を言っても大丈夫だ」と思えるような関係になれば素敵です。でも、最初は「親しき仲にも礼儀あり」。丁寧な言葉使いを心掛けたほうがいいでしょう。
ここは、難しいところです。
アドラー心理学を誤用される方がよくいて、ここのところをよく分かっておられないままに「あ、アドラー。これは使える」という発想をされる。
「嫌われる勇気」が、悪用されている
青野:悪用しちゃう感じでしょうか。
岸見:そうです。けれど、やはり、賢明な若者は見抜いています。
青野:実は、『ほめるのをやめよう』を読んで、個人的にとても面白かったのが、「嫌われる勇気」に対する誤解のくだりです。これも、悪用と言っていいかもしれない。
この続きは次回。以前にも取り上げた「嫌われる勇気」の誤解について議論を深めます。青野社長が、自分自身の体験から痛感する、リーダーに求められる「嫌われないようにする勇気」とは、何か。
上司であることに自信がないあなただから、
よきリーダーになれる。そのために―
◎ 叱るのをやめよう
◎ ほめるのをやめよう
◎ 部下を勇気づけよう
『嫌われる勇気』の岸見一郎が放つ、脱カリスマのリーダーシップ論
ほぼ日社長・糸井重里氏、推薦。
「リーダー論でおちこみたくなかった。
おちこむ必要はなかったようだ」
●本文より―
◎ リーダーと部下は「対等」であり、リーダーは「力」で部下を率いるのではなく「言葉」によって協力関係を築くことを目指します。
◎ リーダーシップはリーダーと部下との対人関係として成立するのですから、天才であったりカリスマであったりすることは必要ではなく、むしろ民主的なリーダーシップには妨げになるといっていいくらいです。
◎ 率直に言って、民主的なリーダーになるためには時間と手間暇がかかります。しかし、努力は必ず報われます。
◎ 「悪い」リーダーは存在しません。部下との対人関係をどう築けばいいか知らない「下手な」リーダーがいるだけです。
◎ 自分は果たしてリーダーとして適格なのか、よきリーダーであるためにはどうすればいいかを考え抜くことが必要なのです。
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