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 日経ビジネスの取材に対し、2019年時点で「2020年にも未曾有の危機が到来する」と予言していた世界的な投資家のジム・ロジャーズ氏。日経BPから出版した新刊『危機の時代 伝説の投資家が語る経済とマネーの未来』では、大恐慌からリーマン・ショック、ブラックマンデー、新型コロナウイルスまで歴史を振り返りつつ、繰り返される危機の本質とどのように行動すべきかを詳細に読み解いている。

 日経BPは7月28日に『危機の時代』の購読者1000人限定でロジャーズ氏本人が登場する第2回のウェブセミナーを開催した。同セミナーでは、事前に寄せられた300以上の質問から、モデレーターの小里博栄氏、ニュースキャスターの佐藤友香氏、日経ビジネス副編集長の広野彩子、日経BPクロスメディア編集部長の山崎良兵が選んだ質問に、ロジャーズ氏が回答した。そこで同セミナーにおける同氏の発言を抜粋して、複数回に分けて記事化する。今回は、新型コロナウイルスの影響で混乱が続く世界情勢と市場動向に関するロジャーズ氏の最新の見方を紹介する。

 世界で感染が広がった新型コロナウイルスの影響は、当初、多くの人が想像していた以上に長期化し、深刻化している。世界経済の混乱は続いており、倒産や失業も増える一方だ。半世紀以上にわたりグローバルで投資を続けているロジャーズ氏への最初の質問は「足元の状況を踏まえて、新型コロナウイルス問題と経済への影響をどう見ているのか」だった。

 「歴史を通じて多くのウイルス、多くの伝染病に人類は直面してきた。今回の新型コロナウイルスのような経験は、もちろん初めてではない。だが、ここまでの規模で世界中が閉鎖されたのは、史上初めてと言っていいだろう。ウイルスが原因でマクドナルドの店舗が閉鎖されたことはかつてなかった。ウイルスが原因で日本航空を含む多くの国際線の航空機が飛ばなくなったこともなかった」

 「世界中の政治家たちは間違いを犯しており、状況を悪化させ続けている。病気そのものよりも(間違った)治療をすることが症状を悪化させることがしばしばある。今回の新型コロナへの対応はまさにそのようなものだ。歴史を振り返るならば、今は回復の途上にあるのだろう。だからこそ私は(対応を誤った)政治家たちがすべてを台無しにしていないことを願っている」

 次の質問は多くの読者の関心が高かった株式市場の先行きだ。新型コロナの問題を受けて赤字に転落する企業が相次ぎ、経済指標も悪化しているが、株価は好調で市場は活況を呈している。株式市場の先行きをロジャーズ氏はどう見ているのか。

 「株価のバブルは、多くの政府が犯している過ちの一部と言える。すべての政府が莫大なお金を印刷し、巨額の財政出動を続けている。日本銀行は膨大なマネーを印刷し、上場投資信託(ETF)を購入することで日本株を買っている。世界中の国が同じようなことをしている。数兆ドル(数百兆円)のお金を使えば、経済効果が生まれているように思えるのは当然だ」

「多くの国の政府が新型コロナ対応で過ちを犯して、事態を悪くしている」とウェブセミナーで語るロジャーズ氏

 「それでも借金を増やすことは、ひどい結果に終わるだろう。それはとりわけ(国の将来を担う)若者たちにとって悪いことで、高齢者にとっても非常に暗い未来が待っている。私には2人の若い娘がいるが、今後彼女たちがどのような世界で生きていくのか全く分からない。私は子どもたちの将来をとても心配している」

 「政府がお金を使い続ける限り、すべてが素晴らしいように見える。だがある朝目を覚ますと『いったい何が起きているんだ』と思うようなクラッシュが起きて、どうやって問題を解決すればいいのかと、頭を抱えることになるはずだ」