一倉さんは、名コピーライターだと思います。

健二氏:そうかもしれません。父は、こういうことも言っていました。販売傾向を丁寧に分析すると、目立たないけれど少しずつ伸びている商品がある。これはみんなが面倒見てやればぐんと伸びるよ、シンデレラなんだ、と。

目立たないけれども実はいいものを持っているシンデレラ商品。そういう言葉の使い方もそうですし、一見すると常識に反するようだが、実は本質をえぐっているという切り込み方の鋭さも一倉さんが名コンサルタントといわれるゆえんだと思います。例えば、以下のような部分です。

「アンバランスの状態は、たくましい成長力の象徴なのだ」

 「組織は、バランスのとれたものでなければならない、という考えがある。今坂朔久氏は、これを簿記会計的な思考の魔術とよんでいる。貸借は必ずバランスしなければならないという考え方が、経営体内のいろいろな考え方や活動に悪影響をおよぼしていることをいっているのである」

 「バランスということばは、ほとんど無条件で人を納得させる不思議な魔力をもっている。バランスした組織とは、なんという保守退嬰的な考え方であろうか。すぐれた会社、成長する企業は、組織面だけでなく、いろいろな面でつねにバランスをやぶって前進している。アンバランスが成長途次の姿なのである。伸びざかりの子供が、手足ばかりヒョロヒョロと伸びるというようなことがあっても、それはアンバランスな状態ではあるが、べつに病気でもないのと、まったく同様なのである。子供も会社も、成長の度合が大きければ大きいほど、アンバランスの状態も大きいといえよう」

 「体のバランスのとれた大人は、もはや成長の望みはない。バランスのとれた組織を固執しようとしたら、成長を犠牲にしなければならない。それでいいのだろうか。 アンバランスの状態は、それが病的なものでないかぎり、たくましい成長力の象徴なのだ。すぐれた経営者は、かぎりある会社の力を一点に集中する。当然のこととして、組織はアンバランスになる。見かけ上の八方美人的組織では、激しい競争に勝ちぬくことはできないであろう。よい組織とは、バランスのとれた組織ではない。目標を達成するために、重点に力を集中した、あるいは集中できる組織である。このような組織は見かけはアンバランスである」

 「会社の成長を、組織のバランスという面からとらえれば、目標達成のためには、まず意識してバランスを崩し、これをバランスさせ、バランスしたかしないうちに、またつぎの高い目標をたてて、バランスを崩す。という、バランスとアンバランスの循環であるといえよう。このように、組織を動態的にとらえるのがほんとうであって、もしも、つねに組織のバランスのみを重点に考えるならば、その会社の将来はもはや灰色である。バランスを意識してやぶり、つぎにそれをバランスさせよ。そして、またもそのバランスをやぶれ。それが成長への道なのだから」

(「マネジメントへの挑戦」4章「組織は目標達成のためのチーム・ワーク」より)

私自身も「バランスの取れた組織のほうがいい」と漠然と思っていましたが、これを読んで反省しました。

健二氏:本質を見抜く力は、わが親ながらすごいと思います。人を見抜く力もそうですし、バランスシートを見れば一発で社長の性格が分かる、そこをピンポイントで治してやればいいんだとよく言っていました。私には皆目分かりませんでしたが(笑)。

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だが、男が嫌った“きれい事のマネジメント論"に
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従来のマネジメント論は、
理論としては、りっぱであっても、
現実に対処したときには、あまりにも無力である。
現実に役だたぬ理論遊戯にしかすぎないのである。
現実は生きているのだ。そして、たえず動き、成長する。
……打てば響き、切れば血がでるのだ。
(「序にかえて」より)

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