近江商人の「三方よし」(「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」)に、これからは「作り手よし」「地球よし」「未来よし」を加えた「六方よし」が、伸びる会社の経営理念になると主張する、経営エッセイストの藻谷ゆかり氏。

 今回は、「六方よし経営」とは一体どのような経営なのか。藻谷氏が取材した事例の中から、典型的な例を紹介してもらった。具体例を聞くと、「作り手よし」「地球よし」「未来よし」が何なのかも分かる。

 前回は、六方よし経営を実現している担い手たちは、どのような人なのかについて語ってくれているので、そちらも参考にしてほしい。

(聞き手は田中淳一郎)

今回は、藻谷さんの本に取り上げられている「六方よし経営」の18事例の中で、印象的な事例を教えてください。

藻谷ゆかり氏(以下、藻谷):事例は、(1)一見古臭い既存の事業や人口の少ない地域を活性化している(2)社会課題を解決している(3)地域資源の価値を高めている、という3つのカテゴリーに分けて紹介しています。

 中でも、社会課題を解決する六方よし経営の初めに紹介している、学生服のリユースショップ「さくらや」は大いに参考になると思います。

<span class="fontBold">藻谷(もたに)ゆかり氏</span><br> 経営エッセイスト。1963年横浜市生まれ。東京大学経済学部卒業後、旧日興証券に就職。ハーバード・ビジネススクールでMBA取得後、旧日本モトローラ、旧日本GM勤務を経て、97年インド紅茶の輸入・ネット通販会社を千葉県で起業。2002年に家族5人で長野県に移住。18年に会社を事業譲渡し、現在は「地方移住×起業×事業承継」についての執筆と講演を行う巴創業塾を主宰。7月、日経BPから『<a href="https://www.amazon.co.jp/dp/4296110020" target="_blank">六方よし経営</a>』を出版。このほか著書に、『衰退産業でも稼げます「代替わりイノベーション」のセオリー』(新潮社)、『コロナ移住のすすめ 2020年代の人生設計』(毎日新聞出版)がある
藻谷(もたに)ゆかり氏
経営エッセイスト。1963年横浜市生まれ。東京大学経済学部卒業後、旧日興証券に就職。ハーバード・ビジネススクールでMBA取得後、旧日本モトローラ、旧日本GM勤務を経て、97年インド紅茶の輸入・ネット通販会社を千葉県で起業。2002年に家族5人で長野県に移住。18年に会社を事業譲渡し、現在は「地方移住×起業×事業承継」についての執筆と講演を行う巴創業塾を主宰。7月、日経BPから『六方よし経営』を出版。このほか著書に、『衰退産業でも稼げます「代替わりイノベーション」のセオリー』(新潮社)、『コロナ移住のすすめ 2020年代の人生設計』(毎日新聞出版)がある

 このお店は、子供たちの学校で指定されている制服や体操服を、地域の中で融通し合うお店です。不必要な人から買い取り、必要な人に安く売るお店ですね。

 高松市の馬場加奈子さんが始めた事業です。育ち盛りの自分の子供たちに、毎年のように制服を新調していては経済的負担が大きすぎるため、古着の制服がないか探したところ、なかったことが起業のきっかけになっています。

 一般的なリユースショップにもない、東京には制服の古着を売っているところがありましたが、別の目的のお店だったそうです。

 そこで、自分でお店をつくろうと考えたのですが、最初は、多くの人からそんな事業がうまくいくはずがないと反対されたそうです。実際、彼女が手がける前は大手のリサイクル店でも参入できなかった事業でした。

 彼女は、それを見事に軌道に乗せて、今では全国に61店を数える規模になっています。

続きを読む 2/5 無理なくお店を経営できる「売り手よし」

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