鈴木:エイズの病原体であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)が1983年に発見された後、発症をとどめる治療薬が開発され、エイズは今日では不治の病として絶望的に恐れられる対象ではなくなってきた。しかし、今日も発展途上国には多くの感染者がいて、これらの地域では感染爆発といっていい状態が続いている。

 この本で読んだ、この事実には、新型コロナウイルス感染症の終着点について、私自身がぼんやりと考えていた仮説の1つをサポートするようなところがあります。

収束シナリオは「天然痘型」など3パターン

どのような仮説でしょうか。

鈴木:新型コロナウイルス感染症の収束シナリオを感染症の歴史を踏まえて考えると、可能性としては、大きく分けて3つのパターンがあり得ると思います。

 第1に、完全に根絶される。天然痘と同じパターンです。

 天然痘は、世界保健機関(World Health Organization:以下、WHO)が、1958年に根絶計画を承認した後、米ソをはじめ各国が、この計画の支援に多くの資金と人員を投下した結果、完全に消えました。天然痘患者は、77年にソマリアで発見された事例を最後に見つからなくなり、80年、WHOが天然痘根絶を宣言。天然痘ウイルスは現在、バイオテロの試みや新型天然痘の突然発生といった不測の事態に備えて、米国とロシアの各1カ所の研究機関のみに保存されている、と、本にも書いてありましたね。

 これは天然痘が、感染を受けても感染症状を発症しない「不顕性(ふけんせい)感染」が少ないウイルスだったから、可能だったと考えられます。不顕性感染が少ないと、例えば、感染者を隔離するということも比較的やりやすい。

 ほかの感染症で考えると、例えば、病原体が原虫のマラリアなども、感染の症状が高確率で見られ、不顕性感染が少ない。けれど、感染した人を隔離しても原虫を保有した蚊が媒介するので、完全根絶の難易度は上がります。ただ、世界各国が総力を挙げれば、天然痘と同じように根絶することも不可能でないように思います。

 しかし、新型コロナウイルス感染症は、発症の度合いが人によって異なり、変異が入りやすい可能性も高いようなので、このパターンに落ち着くことは考えにくい気がします。

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