『嫌われる勇気』をはじめ、多くの著作を世に出してきた哲学者の岸見一郎氏。しかし、リーダーシップを論じるのは、新刊『ほめるのをやめよう ― リーダーシップの誤解』が、初となる。そんな岸見氏に、今どきの管理職の悩みをぶつけるシリーズの第3回。
今回のテーマは、「上司としての自信のなさ」。管理職になることを希望していたわけではないのに、何が評価されたのか、いつの間にかその立場になっている人は少なくない。それでもチームを率いて、仲間を勇気づけ、会社の業績に貢献していくにはどうすればいいのか。
「自信のない上司ほど、よきリーダーになれる」と説く、岸見氏。その理由をより深く聞いていく。
(構成/小野田鶴)

1956年、京都生まれ。哲学者。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。著書に『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(古賀史健氏と共著、ダイヤモンド社)、『生きづらさからの脱却』(筑摩書房)、『幸福の哲学』『人生は苦である、でも死んではいけない』(講談社)、『今ここを生きる勇気』(NHK出版)、『老後に備えない生き方』(KADOKAWA)。訳書に、アルフレッド・アドラー『個人心理学講義』『人生の意味の心理学』(アルテ)、プラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)など多数。
さて、今回の相談はこちらです。
Q.私はもともと、管理職になることを希望していませんでした。しかし、40代を迎えて、何の因果かその立場になってしまって、正直、自信がありません。岸見先生は自信がない人はいいリーダーになれるといいますが、その理由を教えてください。
私自身を含めて、管理職になりたいと希望していたわけでもないのに、いつの間にかなってしまったという人が、周囲にはかなりいます。
岸見:そうですね。それで、上司として自信がない、と。
しかし、自信がある人は困るのです。
自信のある上司は困りもの
岸見:自信がある人は独善的になってしまうからです。他人の意見、部下の意見を聞かないで、自分の言っていること、していることは絶対に正しいと思っている。
自信がないことそれ自体が「いい」とは必ずしも言えませんが、自分の判断が唯一絶対ではないかもしれない、ということを振り返ることができるリーダーのほうが、そうでないリーダーより、優れたリーダーになり得ると思います。
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