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 多くのリーダーが今、悩んでいる「リモートワークで部下を率いる不安」。どう解決したらいいのか。

 『嫌われる勇気』の著者、岸見一郎氏に、世の悩める中間管理職の代弁者として、日経BPクロスメディア編集部長の山崎良兵が「これからの時代に求められるリーダー像」についてインタビューするシリーズの第2回。コロナ禍で浮かび上がった新しい課題の答えを探す。

 岸見氏が提唱するのは、「脱カリスマ」の「民主的なリーダーシップ」。このたび上梓した新刊『ほめるのをやめよう ― リーダーシップの誤解』で、初めてリーダーシップについて論じた。

 上司であることに自信がない人こそ、よきリーダーになれる。そのために、叱るのをやめ、ほめるのもやめ、部下を勇気づけよう――。そんな持論で「自信を持てない管理職」にエールを送る岸見氏に、じっくり話を聞いた。

(構成/小野田鶴)

岸見 一郎(きしみ・いちろう)
1956年、京都生まれ。哲学者。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。著書に『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(古賀史健氏と共著、ダイヤモンド社)、『生きづらさからの脱却』(筑摩書房)、『幸福の哲学』『人生は苦である、でも死んではいけない』(講談社)、『今ここを生きる勇気』(NHK出版)、『老後に備えない生き方』(KADOKAWA)。訳書に、アルフレッド・アドラー『個人心理学講義』『人生の意味の心理学』(アルテ)、プラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)など多数。

今回は、前回の相談の続きです。まずは、相談内容について再確認したいと思います。

Q.コロナショックを受けて、リモートワークが進み、経済環境も激変しています。部下と直接顔が合わせにくい環境で、高い目標を実現しなければならない。コロナのために、会社の業績も悪化しているのでプレッシャーも強い。管理職の1人として正直苦しいなあと思うことも多いのですが、このような困難な時代にあってリーダーにはどのような考え方や行動が求められているのでしょうか。

コロナ禍でのリーダーシップの在り方については、前回、お聞きしましたが、相談者は、リモートワークにも不安を感じています。この点についてアドバイスをお願いします。

岸見:リモートワークはもっともっと進んでいいと、私は思います。

 極端な話をすれば、リニアモーターカーはもう要らないのかもしれません。日帰りで出張する必要はもはやなく、リモートワークで会議をすればいいのです。

 ただし、そこで今までのような会議をしていたら、若い人はついてきません。昔ながらの上司のように、ただ「その場にいる」だけで存在感を示し、部下を威圧するようなリーダーは、もう要らないのです。

リモートワークは、上司と部下を対等にする

岸見:Zoomのようなオンラインのツールを使った会議では、「発言しない」のであれば、「その場にいない」のと同じです。だからこそ、きちんとリーダーが発言し、部下も発言できるという雰囲気や状況をつくれる可能性が高い。

 これが、リモートワークにおける会議のメリットだと思います。今、この取材がそうであるように、オンラインで対話する形の仕事をもっと進めていけばいいと思います。

 もはや元に戻る必要はありません。今まで当然のように、満員電車に詰め込まれ、長い時間をかけて通勤してきたけれど、それすら必要なかったのだということに、我々は今年の4月、5月に気づいてしまったのですから。

 それなのに6月、7月になった途端、元通りに全員が毎日出社して、対面で会議するという会社も多くあります。せっかくできるようになったことなのですから、これからも続けていけばいいと思います。

 リモートワークというのは、「民主的なリーダーシップ」をつくり出しやすい環境だと思います。