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 社長を怒鳴り散らすような情熱的な指導で知られた経営コンサルタントの故・一倉定(いちくら・さだむ)氏。1918年生まれで1999年に80歳で亡くなるまでに、大中小1万社以上の企業を指導したとされる。門下生にはユニ・チャーム創業者の高原慶一朗氏やドトールコーヒー創業者の鳥羽博道氏といった、名だたる経営者が名を連ねる。ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏も一倉氏の思想を学んできた経営者の1人だ。

 一倉氏は「社長が変われば、会社は変わる」と主張し、経営トップに焦点を当てて企業を指導してきたことから「社長の教祖」とも呼ばれている。「鬼」「炎のコンサルタント」とも呼ばれた同氏は、なぜ日本の多くの経営者に支持されたのか。なぜ21世紀になっても、その言葉は多くの人の心を揺さぶるのか。今回の記事では一倉氏の名言から、同氏が理想とした社長のあるべき姿と経営のあり方に迫る。

 「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも社長の責任だ」。一倉氏はこんな言葉を残している。無茶苦茶な主張のようにも聞こえるが、その真意はこうだ。「自分が知らないところで起きた外部環境の変化や社員の行動も、すべて社長の責任である」。そう考えるくらいの強い責任感を経営トップに求めていた。

 赤字企業の立て直しを一貫して手掛けてきた一倉氏が嫌ったのは、業績が悪い理由を社員のせいにしたり、景気や取引先など外部環境のせいにしたりする経営者だった。このような経営者に対しては、烈火のごとく怒り、怒鳴り散らすだけでなく、時にはモノを投げつけるようなことさえあったという。

社長が相手でも、小学生を叱り飛ばすように指導していた一倉定氏

 日経BPではそんな一倉氏の思想の源流ともいえる書籍『マネジメントへの挑戦』をこのほど復刻した。初版は1965年で、半世紀以上も前になる。1963年に一倉氏がコンサルタントとして独立した2年後に発刊されたものだ。

 55年も前に書かれた本であるにも関わらず、本文を読み進めると、時代を越えた強烈なメッセージが伝わってくる。とりわけ心を打たれるのが、「日本の企業経営を何としても良くしたい」「経営者はどんなことに対しても強い責任感を持つべきだ」という一倉氏の異常なまでの熱意だ。何に対してそんなに怒っているのかと思うほど真剣な一倉氏の数々の言葉からその思想を読み解きたい。

 「いい会社とか悪い会社とかはない。あるのは、いい社長と悪い社長である」という言葉を一倉氏はくり返して語ってきた。詳細は日本経営合理化協会から出版されている一倉氏の書籍に詳しいが、初期に書いた『マネジメントへの挑戦』ですでに、経営リーダーが自分自身を管理し、強い責任感を持つことの重要性を指摘していた。