摩擦をおそれず、障害をぶち破っていく

 一倉氏は、なれあいのような人間関係を重視する仲良しクラブ的な会社を厳しく批判していた。「いくら従業員が楽しく働き、人間関係がよくても、会社をつぶしたらなんにもならない。次元の低い和の精神は会社に大禁物だ」「仲良くするだけの人間関係は、それがいかに優秀なものであっても、会社にプラスにならないようなものなら、“悪い人間関係”である。人間関係は、会社の繁栄に優先しないのだ」

 むしろ経営トップは、社員に憎まれたり、批判されたりすることがあっても、高い目標を設定し、挑戦していかなければ、会社は生き残れないと一倉氏は強調していた。ワンマンと言われても、強いリーダーシップを発揮すべきだという主張だ。

 「相談してきめたことは必ずといっていいくらい、常識的なムリのない線に落ちつく。これで会社がうまくいったら、つぶれる会社は一つもない。会社の方針は、社長の信念から、社長の責任で、高い目標を設定しなければ、生き残れるものではない。決定はワンマンでなければいけないのだ。チームというのは運営の面で必要なのである」

 「自分で信念をもって行動する人は、摩擦をおそれず、障害をぶち破っていく。独創的なアイデア、革新的な考えほど、つねに批判や反対がつきまとうのである。そうしたものをおそれたら、進歩も革新もないのである」

 コロナ・ショックに直面し、多くの企業を取り巻く経営環境は激変している。売上高が急減するなどして、どこに活路を見出せばいいのか苦悩している経営リーダーもきっと多いことだろう。

 会社の生死がかかっている局面だからこそ、トップの責任は平時と比べても重い。だからこそ経営リーダーは「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも社長の責任だ」と考えるほどの強い責任感を持ち、外部環境を言い訳にせずに必死で経営に向き合うべきだと主張する一倉氏の言葉は、「危機の時代」に一層強い輝きを放っている。

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従来のマネジメント論は、
理論としては、りっぱであっても、
現実に対処したときには、あまりにも無力である。
現実に役だたぬ理論遊戯にしかすぎないのである。
現実は生きているのだ。そして、たえず動き、成長する。
……打てば響き、切れば血がでるのだ。
(「序にかえて」より)

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