鈴木:小田中先生が本の中で、マスクの効用について書かれていましたね。
マスクは、新型コロナウイルス感染症を「うつす」ことの予防にはなるが、「うつされる」ことを防ぐのには役に立たないではないか、と。
鈴木:そう考えると、マスクには、物理的に「意味があるか、ないか」だけでなく、社会的な意味がある。小田中先生のこの指摘は、正しいと思います。マスクをつけることで、「私は、ほかの人にうつしたくないですよ」「ほかの人からうつされたくないですよ」と意思表示する。そういうシグナルとして機能していると書かれていました。私も、そういう意味合いでマスクをつけているところがあります。
そんなマスクの社会的な側面については賛否があるかもしれませんが、公衆衛生にポジティブに働くのであれば、結果的に「いいこと」ではないかと、私は思っています。マスクをしている人が多い環境では、衛生意識があまり高くない人も、公衆衛生に配慮した行動をとりやすいのではないかと。
感染症は格差を可視化する
ユーグレナ社は、バングラデシュと関わりながらビジネスをしていますよね。発展途上国における新型コロナウイルス感染症の感染状況や対策について、何か情報をお持ちではないでしょうか。
鈴木:情報というより、具体的なアクションとして、健康食品をはじめ、健康の維持や増進に活用できる可能性のある自分たちのプロダクト(製品)を送るといったことを、まずやりました。渦中にあっては、現場に負担をかけるような情報収集は難しいので、もう少し落ち着いてからと考えています。
感染症の歴史を振り返ると、感染爆発(パンデミック)は、格差を広げたり、格差をより明確にしたりする方向に働くことが多かったように感じます。
本には多くの事例が挙がっていますが、有名なところでは、14世紀のヨーロッパにおけるペスト感染爆発。領主より農奴の死亡率が高く、人口動態に変化をもたらした。それが、ひいては両者の力関係を変えるのですが、初期においては格差を広げたといえるでしょう。19世紀のヨーロッパで起きたコレラ感染爆発も、被害は都市スラムに集中しました。
新型コロナウイルス感染症にも、格差を可視化する未来が、待っているのでしょうか。
鈴木:確かに、そういう側面はあるのかもしれません。

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