でも今のこの厳しい状況を正直に伝えてしまうと、みんながすごく不安になるんじゃないかとか、やっぱりいろいろ考えてしまって、なかなか実態を伝えられない人も多くいると思います。突然、勤めている会社が倒れるということだって、十分に考えられる状況ですし。

岸見:ええ、本当にその通りだと思います。

勇気が必要ですが、それでもやっぱり正直に、包み隠さず、つまびらかにして、そのうえで「みんなで一緒に頑張ろう」という雰囲気をつくることが大事なのですね。

岸見:その通りです。リーダーは、くれぐれも「自己保身」に走ってはいけない。自分の身を守ってはいけないのです。

なるほど。

岸見:組織のために、部下のために、さらには部下の家族も含めて、自分が守る。もちろん自分一人で何もかもはできないのですが、リーダーとして、できる限りのことをしたい、ということを、きちんと言わないといけない。そのためには、根拠のない楽観主義を振りかざしてはいけない。

「私はあなたに関心を持っています」

岸見:この話に関係してくると思うのですが、(心理学者のアルフレッド・)アドラーは「共同体感覚」という言葉を使っています。この言葉の英訳は「social interest」で、「他者への関心」と訳してもいい。

 組織のリーダーに限らず、あまりに多くの人が今、自分にしか関心がない。「今起こっていることは、自分にとってどんな意味があるのか」ということしか考えられない人が多い。という中で、リーダーは少なくとも他者に関心を持ち、他者のために自分に何ができるか、ということを考えていける人でないといけない。

 そのあたりを、きちんと部下の前で、表明していく機会をぜひ持つ必要があると考えています。

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