そして、チームのメンバーに「根拠のない安心感」を与えてはいけない。

 楽観主義は駄目なのです。部下に対して、「大丈夫だ。我々ならなんとかこの危機を乗り越えられるんだ」などと、根拠もなく言ってはいけない。「何事が起きているのかも分からない」という前提に立たないといけない。根拠のない楽観主義に立たない、ということが大事です。

 そして、根拠のない安心感を部下に与えようとして「情報の隠蔽」をしてはならない。

 今、業績が悪化している、と、相談の中にありましたね。

 私自身も、新型コロナの後、仕事は非常に少なくなりましたし、今年2月以来、講演会がオンライン以外ではまったくない、という状況になったとき、前年度と比べれば、収入は当然、減っているわけです。

 それを会社という組織のレベルでいうと「我が社の業績は今回のことで悪化している」。しかも「改善する見込みもあまり立たない」。この真実を、隠さないで、ちゃんと社内に伝える、ということがリーダーの役目です。

 それなのに真実を隠蔽してしまうと、信頼を失うことになるでしょう。

結果が出せなくても、信頼は得られる

岸見:今の日本の新型コロナ対策などは顕著だと思いますが、結果として「たまたまうまくいっている」と見えただけであって、何もしていないリーダーたちが── 無能とまでいっていいかは分かりませんが、無策なリーダーたちが──、たまたま感染者数が他国と比べてそれほど多くないという現実を前にして、それをあたかも自分の手柄であるかのように言ってしまう。そんなことをすると、部下の信用を失います。

 手柄の横取りをしてはいけないと思いますし、「一緒になって危機を乗り切っていく」ということが大事です。現実問題として、このどさくさに紛れて、随分、ひどいことをしているリーダーたちもいます。だから、「どうなるか分からないけれど、部下と組織のために、自分は力を尽くしているのだ」ということを、リーダーは、きちんと鮮明に押し出さないといけない。

 西洋諸国などは、日本と比べて感染者数も死亡者数も非常に多い。にもかかわらず、リーダーに対する国民の信頼は厚いようです。「うちのリーダーはやってくれているようだ」と。

 だから、リーダーは結果じゃないんです。

 この危機を乗り切って、経営的にも何も問題ない状況に持っていくのが、リーダーにとってもちろんベストですが、たとえ、最悪の事態を招くことになるとしても、このリーダーだったらついていきたい、と思えるリーダーにならないといけない。このコロナショックを受けて、そんなこともリーダーは考えていかなくてはならない。

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