岸見:今回、この新型コロナで起こっているのは前例がないことです。

 過去に同じような事例があって、それを参照しながら、どういう対応をすればいいかを考える、ということについては、得意な方が多いと思います。

 秀才型のリーダーはそうですね。「答えは多分出るだろう」「過去の事例を参照すれば、そこにきっと何らか解決のヒントがあるのだろう」と、分かっている。そういうタイプの事態を前にしたときに、力を発揮できる人はいると思います。

 しかし、新型コロナウイルスに関しては、そのウイルスがどのようなものかも分かりませんし、一時的に、奇跡的に、収束しつつあるようにも見えたときもありましたが、台風のようにどこか遠くにいるわけでなく、私たちのすぐ近くにいて、対応を誤ればたちまち第2波、第3波が来るのが分かっているのです。

 今後のことは、誰にも分からないわけです。上司だけではなくて、部下も先のことが分からないこの状況の中で、どうするのか。

「自分も分からない」と認める勇気

岸見:まず、上司といいますか、リーダーも「自分が答えを持っていない」ということを率直に認める勇気が要ります。それなのに「(答えを)知っている」かのように振る舞ってしまうと、かえって信頼を失うことになります。

 ですから、こういうふうに考えてみたらいかがでしょう。

 「答えがないかもしれないとき、あるいは準備ができていないときこそ、自分の本当の実力を発揮できる」

 私はよく講演会をしますが、いつも質疑応答の時間が長いのです。

 私の場合、パワーポイントは使いませんが、事前に準備できれば、講演、というよりむしろ発表かもしれませんが、わりあい無難に(1人で話す部分を)こなすことはできます。ところが、その講演が終わった後の質疑応答は、まったく準備ができません。どんな質問が出てくるのか分からない。けれど、「そういうときこそ、自分の実力が発揮できるのだ」と思っています。

 そこはリーダーも同じで、「自分も分からないけれど、答えがなく、準備がないときにこそ実力を発揮できるはずだ」というふうに思わないといけないと思います。

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