全5132文字

 上司であることに自信がない人こそ、よきリーダーになれる。そのために、叱るのをやめ、ほめるのもやめ、部下を勇気づけよう。

 そんな「脱カリスマのリーダーシップ」を提唱するのが、新刊『ほめるのをやめよう ― リーダーシップの誤解』。『嫌われる勇気』の著者、岸見一郎氏が、初めてリーダーシップを論じた。

 世の中間管理職にありがちな悩みに、岸見氏は、どうアドバイスするのか。

 悩める上司の代弁者として、自身も「自信がない中間管理職」である日経BPクロスメディア編集部長の山崎良兵がインタビューする。今回は、現在多くのリーダーが悩んでいる「新型コロナで業績の悪化する中で、チームのメンバーとどのように接したらいいのか」について、岸見氏に話を聞いた。

(構成/小野田鶴)

岸見 一郎(きしみ・いちろう)
1956年、京都生まれ。哲学者。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。著書に『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(古賀史健氏と共著、ダイヤモンド社)、『生きづらさからの脱却』(筑摩書房)、『幸福の哲学』『人生は苦である、でも死んではいけない』(講談社)、『今ここを生きる勇気』(NHK出版)、『老後に備えない生き方』(KADOKAWA)。訳書に、アルフレッド・アドラー『個人心理学講義』『人生の意味の心理学』(アルテ)、プラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)など多数。

大変ご無沙汰しております。前回、取材させていただいたのは、実に6年前。あのときは結局、取材というより、私の人生相談になってしまい、なんと5~6時間にもわたって、長々と話をお聞きして、さまざまなアドバイスをいただきました。

岸見:そうでしたね。昨年、引っ越しましたが、以前、山崎さんにも取材いただいた、京都のあの部屋で、2年ほど大激論をして作ったのが、『嫌われる勇気』(古賀史健氏と共著/ダイヤモンド社)でした。今は欧米圏でも読まれています。韓国から火が付いた形で、アジアからヨーロッパへと広がりました。

あのときは、『嫌われる勇気』の感想から話が始まり、仕事の悩みや娘のことなどプライベートについてもたくさん相談しました。彼女も今は高校生になって、『嫌われる勇気』を読んでいます。それで最近、「お父さんの私への接し方が、あのころ変わった理由が分かった」と言うんです。「お父さんが“上から目線”じゃなくなったと何となく思っていた」と言ってもらえて、すごくうれしかった。岸見先生と『嫌われる勇気』に出会えたことに本当に感謝しています。

 その際に書いた記事も好評でした。もちろんちゃんと仕事もしたんですよ(笑)。

 さて今回は、1人の中間管理職としての悩みを相談しに伺いました。

 あれから6年たち、岸見先生は今回リーダーシップ論の『ほめるのをやめよう』という本を新たに出し、私は40代後半になりました。頼りないかもしれませんが、今はこれでも一応は管理職です。同世代の友人たちも管理職になるケースが増えていて、一緒に飲んだりして話すと、いろいろな愚痴や悩みをよく聞きます。

岸見:そうでしょうね。

だから今回は、誰の悩みなのかは特定されないように、ちょっと話をぼかしたりしながら、私がよく耳にするさまざまな管理職の悩みについて、岸見先生からアドバイスをいただきたいと思います。最初の相談は、こちらです。

Q.コロナショックを受けて、会社でリモートワークが進み、経済環境も激変しています。部下と直接顔が合わせにくい環境で、高い目標を実現しなければなりません。新型コロナのために、会社の業績が悪化しているのでプレッシャーも強い。管理職の一人として「正直苦しいなあ」と思うことが多いのですが、このような困難な時代にあって、リーダーにはどのような考え方や行動が求められているのでしょうか。