新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、様々な業界にダメージを与えた。エンターテインメントやスポーツといった、リアルな会場で開催されるライブエンターテインメントもその一つ。そもそもの興行を行えないという事態に陥り、昨今は回復の兆しがみられるものの、極めて困難な状況が長らく続いた。

 コロナ禍という逆境のなか、成長を続けるプロスポーツリーグがある。男子バスケットボールのBリーグ(公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ)だ。

 並立する「NBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)」と「bjリーグ(日本プロバスケットボールリーグ)」という2つのリーグを統一する形で、2015年に新リーグとして誕生したBリーグは、開幕初年度である2016-17シーズンの営業収入が約150億円。3シーズン目の2018-19シーズンが約221億円、コロナ禍の影響を大きく受けた2020-21シーズンも約242億円という結果を残している。

 Bリーグや各チームではさらなる成長を図るべく、様々な改革やDXが推し進められている。プロ野球やサッカーJリーグと比べて歴史が浅い分、従来の枠にとらわれない取り組みがなされており、そのさまは、スポーツビジネス関係者だけではなく、幅広い業界から注目を集めている。今年5月には、Bリーグの3代目チェアマンを務める島田慎二氏による著書『B.LEAGUE公認 最強のスポーツクラブ経営バイブル』(集英社)と、Bリーグ所属チーム「川崎ブレイブサンダース」の事業戦略マーケティング部長である藤掛直人氏の著書『ファンをつくる力 デジタルで仕組み化できる、2年で25倍増の顧客分析マーケティング』(日経BP)が相次いで発刊された。

 Bリーグおよび所属チームではどのような改革がなされているのか。そして目指す着地点はどこにあるのか。藤掛直人氏が、島田慎二チェアマンに話を聞いていく。

川崎ブレイブサンダースの藤掛直人・事業戦略マーケティング部長(左)とBリーグの島田慎二チェアマン(写真:竹井俊晴)
川崎ブレイブサンダースの藤掛直人・事業戦略マーケティング部長(左)とBリーグの島田慎二チェアマン(写真:竹井俊晴)

 Bリーグ3代目チェアマンの島田氏は、もともとはBリーグの人気チーム「千葉ジェッツ(現・千葉ジェッツふなばし)」の社長を務めていた人物だ。就任当初の12年当時の千葉ジェッツは、「文字通り倒産寸前の状態」(島田氏)だったが、島田氏が改革に着手したことで業績は大幅に改善した。2020-21シーズンの千葉ジェッツは、リーグトップとなる約20億4000万円の営業収入を挙げている。

 一方の藤掛氏は、DeNAにてスマートフォンゲームのプロデューサーを務めた後に、スポーツ領域の新規事業開発を担当した。スマホゲーム運営流のデータを活用したPDCAサイクルやSNS戦略をスポーツビジネスの世界にて実践。特にSNS(交流サイト)では「YouTube」のチャンネル登録者と「TikTok」フォロワー数がどちらも10万人を突破するなど成果を収めている。