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 日経ビジネスの取材に対し、2019年時点で「2020年にも未曾有の危機が到来する」と予言していた世界的な投資家のジム・ロジャーズ氏。5月25日に日経BPから出版した新刊『危機の時代 伝説の投資家が語る経済とマネーの未来』では、大恐慌からブラックマンデー、リーマン・ショック、新型コロナウイルスまで歴史を振り返りつつ、繰り返される危機の本質とどのように行動すべきかを詳細に述べている。

 今回の記事では、ロジャーズ氏と、米バークシャー・ハザウェイのウォーレン・バフェット氏、世界最大級のヘッジファンドである米ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者であるレイ・ダリオ氏の発言から、今回の危機が、かつての大恐慌のような深刻な問題に発展する可能性を読み解く。

 ジム・ロジャーズ氏に限らず、世界的な投資家たちは歴史に強い関心を持っている。現在起きている「コロナ・ショック」と深刻化しつつあるグローバルな経済危機を読み解くには、歴史の教訓に学ぶことが大事だと考えているからだ。「歴史から未来を予測する」ことの重要性をロジャーズ氏は新刊『危機の時代』でくり返し強調しているが、ほかの偉大な投資家も同様の考えを持っている。

 例えば、2020年5月上旬に開かれた米バークシャー・ハザウェイの株主総会。同社の会長兼CEO(最高経営責任者)であるウォーレン・バフェット氏のスピーチはさながら歴史学の講義のようだった。建国以来の米国の歴史を踏まえて、経済情勢と市場の変化を解説しつつ、足元の世界情勢と投資に関する見方を詳細に語った。4時間半に及ぶ長い総会だったため、本稿では一部だけを紹介したい。

 とりわけ印象的だったのが、1929年に米ニューヨークで起きた株価暴落に端を発する大恐慌の分析だ。ウォール街で株価が大暴落した10カ月後の1930年8月に誕生した現在89歳のバフェット氏にとり、大恐慌は本で読んだだけの歴史物語ではない。同氏とその親やきょうだいが経験した現実の物語だっただけに説得力があるように感じられた。

 バフェット氏は「1929年10月にいったん大暴落した株価は、その後9カ月半で20%以上回復した」と指摘。「人々は1930年秋の時点で大不況が起きているとは考えていなかった。それまで米国では少なくとも十数回の不況が起きており、今回の不況が通常と劇的に違うものではないように見えた」(バフェット氏)。多くの人は、大恐慌の初期の段階では、これが過去と同じような不況でそこまで深刻なものに発展すると考えていなかった。

 しかし「その後の2年間で米国の株価は83%下落し、1929年9月3日のピークから89%も下落したのは異常だった」と続けた。その後、株価が1929年のピークを超える水準に回復するまで20年以上かかったという。