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「戦争の最初の犠牲者は真実だ」

 1945年、米国は広島と長崎に原子爆弾を投下した。本当はそうする必要はなかった。日本はすでに平和を手に入れる方法、つまり降伏を模索していたが、米国は気にしなかった。日本はソ連による占領を心配していたので、降伏する準備はできていた。

 それでも米国には原爆投下を望んでいた将軍がいた(編集注:当時のハリー・トルーマン米大統領が原爆投下を決めたというイメージが強いが、実際にはトルーマンは明確な判断を下しておらず、原爆を開発する「マンハッタン計画」を指揮した米陸軍の将軍レスリー・グローブスらが投下を主導したという説が最近では有力視されている)。だから米国はB29爆撃機を日本に飛ばして、原爆を投下した。「日本を倒すために原爆を投下しなければならなかった」という主張は、ウソだったと言えるだろう。

 だから日本政府は、米国が制裁を課したから戦争を始めなければならなかったと国民に教え、日本人は米国による制裁を終わらせるために戦争に行かなければならなかった。

 ここから得られる教訓は、1つの情報源だけに耳を傾けてはいけないということだ。外国人を非難するという安易な手段に頼る政府が愚かな戦争を引き起こすことを、歴史は証明している。

 米国が2003年にイラク戦争を始めた際には何が口実だったのか。米国はイラクのサダム・フセイン大統領(当時)が「大量破壊兵器を持っている」と主張した。しかし実際には大量破壊兵器が存在しなかったことが後で明らかになった。米国ではその事実がきちんと報道されず、「メディアは検閲を受けている」と言われたほどだ。

 そのような状態は良くない。どの国も開かれたジャーナリズムと言論の自由を持つべきだ。しかし戦争の時代を象徴する有名な格言がある。「戦争の最初の犠牲者は真実である」というものだ。

 この言葉は、古代ギリシャの三大悲劇詩人の1人で、ペルシャ戦争に参加したアイスキュロスが語ったとされる。米国が第一次世界大戦に参戦した際に、上院議員のハイラム・ジョンソンは、この言葉を語った。ジョンソンは自分が最初に語った言葉だと主張したようだが、たぶんそれは真実ではない。