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 日経ビジネスの取材に対し、2019年時点で「2020年にも未曾有の危機が到来する」と予言していた世界的な投資家のジム・ロジャーズ氏。5月25日に日経BPから出版した新刊『危機の時代 伝説の投資家が語る経済とマネーの未来』では、大恐慌からブラックマンデー、リーマン・ショック、新型コロナウイルスまで歴史を振り返りつつ、繰り返される危機の本質とどのように行動すべきかを詳細に読み解いている。

 今回は新刊『危機の時代』の一部を抜粋し、ロジャーズ氏が警鐘を鳴らしている経済の悪化が本物の戦争につながるリスクに関する見方を紹介する。

 歴史を振り返ると、経済の悪化は多くの戦争につながってきた。(貿易戦争のような)経済対立はしばしば実弾を撃ち合う本物の戦争に発展する。トランプ大統領は戦争が好きだ。彼は世界を戦争に巻き込む可能性がある。トランプ大統領は、ニューヨーク・ミリタリー・アカデミー出身だ。彼は軍事学校に通ったので、自分が将軍たちよりも優れていると思っている。

 だから、彼は危険な人物と言えるだろう。政治家は戦争をすることで(経済的な問題から)国民の注意をそらすことができる。戦争が起こったときに、外国人を非難するのはとても簡単だ。異なる肌、異なる言語、異なる宗教で、食べ物も異なっており、すべての問題について外国人はターゲットにしやすい。

 歴史を通じて多くの政治家は外国人を非難しており、それはしばしば戦争につながった。振り返ってみると、ほとんどの戦争は「どうしてあんなにバカげた戦争になったのか」と後に言われることになるが、実際に起きてしまう。

「政府はウソをつくもので、安易に信じてはならない」と語るジム・ロジャーズ氏(写真:的野 弘路)

 日本が1941年に米国を攻撃したとき、日本政府は国民に対して何を語ったのか。「米国が石油や鉄くずの日本に対する輸出を禁止したからだ」といった説明をした。米国が航空機用の燃料を禁輸したり、日本の在米資産を凍結したりするなどの措置もあった。米国は明らかに日本を挑発していた。そこで日本の政府は「開戦せざるをえなくなったのは米国のせいだ」と非難した。

 日本はさまざまな資源や原材料を米国からの輸入に頼っていた。言い換えれば、日本が米国を攻撃して勝利した場合、相手に言うことを聞かせて、再びこれらを輸入することができた。つまり資源へのアクセスを得るために、戦争をしなければならないという理屈だ。政府は常にウソをつくもので、安易に信じてはならない。