13万部突破のベストセラー『2040年の未来予測』の著者・成毛眞さんと、4月に『ミドリムシ博士の超・起業思考』を出版したユーグレナ社執行役員 研究開発担当の鈴木健吾さんの対談、中編です。投資家である成毛さんと、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養を実現した立役者である鈴木さんの共通点は、科学的な思考がベースにあること。2人の対話から、これからの社会変化を予測するために必要な視点が見えてきます。

これからは生命科学、量子コンピューター、宇宙
『2040年の未来予測』には、テクノロジーの進展による社会の変化について書かれています。今後の社会はテクノロジーによってどう変わっていくのでしょうか。
成毛眞氏(以下、成毛):社会の変化の予測は、テクノロジーのベースとなる基礎科学が確立した時期がポイントになります。例えば、量子力学がシュレーディンガーやハイゼンベルクなどの理論物理学者によって確立されていったのは、1920年から1940年ごろ。当時はみんな、量子力学がなんの役に立つのか分かりませんでした。でもその後、量子力学の理論をベースに半導体ができ、パソコンや携帯電話が誕生した。そして、50億人がスマートフォンを持つようになったのは最近ですよね。BtoCの産業として身近なものになるまで、100年かかるんです。
なるほど。
成毛:特殊相対性理論や一般相対性理論が確立したのは、1905年から1915年くらいの間。それから100年たって、今GPSの恩恵をみんなが受けていますよね。ジョン・フォン・ノイマンが、現在のコンピューターの基本的な構成法を提唱したのは1940年代の後半。現在はそれからまだ80年。2040年には一般の生活に量子コンピューターが役立つようになっているかもしれません。
研究分野や理論の確立から100年という年数が、市場が発展するまでの目安になっているんですね。
成毛:そう考えたら、生命科学って遅いんですよ。ワトソンとクリックがDNAの二重らせん構造を発見したのが、1953年なので。2050年ごろには、50億人が毎日飲む老化防止の薬とか出てくるかもしれませんね。NMN*1が安く合成できるようになったら、あらゆる食品にNMNが入ることも考えられる。あと、FDA(米食品医薬品局)が承認した、バイオジェンとエーザイのアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」なんかは、そのうち米国の高齢者向けのヨーグルトに入るかもしれませんよね。
これから伸びる余地がある分野なので、ベンチャーキャピタルは生命科学の企業に投資しているんです。ユーグレナ社は有望ですよ。リップサービスに聞こえるかもしれないけれど、本気です。あとは大阪大学のオートファジー研究のベンチャー「AutoPhagyGO」にも個人で投資しています。その他の投資対象の分野は、量子コンピューターと衛星コンステレーション*2かな。既存のITには投資しません。
*2 多数の衛星を打ち上げて通信網などを作る仕組み。

元日本マイクロソフト社長、HONZ代表
1955年北海道生まれ。1986年マイクロソフト株式会社入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。現在は、書評サイトHONZ代表も務める。『amazon 世界最先端の戦略がわかる』(ダイヤモンド社)、『アフターコロナの生存戦略 不安定な情勢でも自由に遊び存分に稼ぐための新コンセプト』(KADOKAWA)、『バズる書き方 書く力が、人もお金も引き寄せる』(SB新書)など著書多数。
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