若いうちから身に付けておきたいビジネスパーソンとしての必須スキル。その1つがファイナンス(財務)の知識だ。事業を通じてしっかりとキャッシュ(現金)を確保し、次の成長へとつなげる。そのために会社の現在地と進むべき道筋を「数字」で把握し、考え、コミュニケーションを図る。そのファイナンスの伝道師ともいえる『実況!ビジネス力養成講義 ファイナンス』(日本経済新聞出版)の著者、オントラック代表の石野雄一氏に、なぜ今、ビジネスパーソンにとってファイナンスの知識が重要なのか聞いた。

 石野氏は、6月22日開催のウェビナー(オンラインセミナー)、日経ビジネスLIVE「あなたを強くするビジネススキル」シリーズに登壇する予定(詳細は記事末尾に)。

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「ファイナンス(財務)」は、ビジネスパーソンにとってどのようなものなのでしょうか。

石野雄一氏・オントラック代表(以下、石野氏):「ファイナンス」は、自分の人生を心豊かに過ごすために身に付けるべき知識だと私は思っています。

 ファイナンスなんて、経理以外の人には関係ないと思っていらっしゃる方が多いかもしれません。ただ、私が思うに、何らかの形でビジネスに関わっている限り、会計やファイナンスの基礎知識や考え方を知っておくことは必須だと思います。会計やファイナンスはビジネスの「コミュニケーションの道具」だからです。業種・業態、事業規模などに関係なく、国境も越えてすべての企業に通用する「世界共通の言語」なんです。

 これからビジネスの世界で活躍していきたいと思っている方には、ファイナンスの知識は絶対に欠かすことができません。たとえ日本語を話す日本人同士でも、ファイナンスという「共通言語」を知らないと、ビジネスの現場ではきちんとしたコミュニケーションがとれないからです。

ファイナンスの伝道師、オントラック代表の石野雄一氏
石野雄一(いしの・ゆういち)氏
オントラック代表
旧三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。米インディアナ大学ケリー・スクール・オブ・ビジネス(MBA課程)修了。日産自動車で財務部に在籍。旧ブーズ・アレン・ハミルトン(現・PwC Strategy&)を経て、オントラックを設立。ファイナンス、財務モデリングのトレーニングを実施している。著書に『実況!ビジネス力養成講義 ファイナンス』(日本経済新聞出版)、『道具としてのファイナンス』(日本実業出版社)、『ざっくり分かるファイナンス』(光文社新書)などがある。

上司の考えが分かり、企画も通る

キャリアアップにはどう生きるのでしょうか。

石野氏:企業というのは、ヒト、モノ、金、時間、情報という「経営資源」を使って「価値」を創造しています。ファイナンス、つまりお金の流れや考え方を学ぶことによって、事業活動とはどういうものなのか、という全体像が分かるようになります。例えば、新聞を読んでいても、どこかの企業の売り上げや利益が前の期より増えたか、減ったかといった字面だけを追いかけるのではなく、その背景まで想像できるようになります。

 自分の会社の事業活動も多面的に見えるようになり、経営陣の考えていることや、今後の事業展開などもだんだん見通せるようになっていくと思います。そうなれば、上司や経営幹部と近い目線で会話ができるようになりますし、そういう共通認識に立って考えた企画であれば、そうでない場合と比べて採用される確率は格段に高まります。

 皆さんは、営業、マーケティング、法務、人事、エンジニアなどそれぞれ専門分野の知識や経験を持っていることと思います。もちろん、そうした専門性を磨くことは大事だと思います。同時に、それらの知識にファイナンスの知識が加われば、鬼に金棒です。スキルを掛け算することで、あなたの希少性(市場価値)がぐっと高まり、キャリアアップの道が開けます。

 先ほどお話しした通り、ファイナンスの知識は世界のすべての企業で役に立つので、転職の際にも間違いなく武器になります。若い人で「英語が得意」という人がずいぶん増えた印象がありますが、その分、就職・転職市場では英語がうまくても大きな差をつけることは難しい。しかし、ファイナンスは、これだけ重要なのにもかかわらず、きちんとした知識を身に付けている人は少ないので、少し努力すれば、はっきりとした差をつけることができます。

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