日経平均株価はいずれ最高値を更新

 私は、日経平均株価が3万円でも日本株は割安と考えています。三菱UFJについて詳しく説明しましたが、逆バブル株はほかにもあります。三井住友FG、みずほFG、三菱商事、ENEOS、安田倉庫など、財務内容・収益力と比較して、あり得ないくらいの低いバリュエーションに放置されている銘柄が、たくさんあります。

 今後10年は、平成の構造改革の結実によって、日本株がさらに飛躍する時期になると予想します。いずれ、日経平均はバブル前の最高値(1989年12月の3万8915円)を超えていくことでしょう。

 しかし、私の考えと正反対の悲観論を語る人がたくさんいることを、私は知っています。

 日本に対する代表的な悲観論に、以下のようなものがあります。

(1)人口が減る国。GDP成長率が低い
(2)IT後進国。米国にも中国にも勝てない
(3)労働生産性が恒常的に低い
(4)引用論文数の低下など科学立国に陰りの兆候
(5)自然災害多発国。地震やスーパー台風の被害が続く

 こうした悲観論に対して、私は以下のように考えています。

(1)人口の減る国。GDP成長率が低い

 日本企業は、成長率が高い欧米やアジアにどんどん出ていくことで、成長しています。かつて内需産業といわれていた小売り・食品・サービス・化粧品・金融・陸運などが海外で成長するようになりました。自動車・電機・機械など輸出産業は、海外現地生産・現地販売が当たり前になり、海外ビジネスを拡大しています。

 日本企業は近年、海外で巨額の合併・買収(M&A)を実施し、海外ビジネスの拡大に拍車をかけています。こうして海外ビジネスを拡大させた成果で、日本は常時、経常収支で高水準の黒字を稼ぎ続けています。失われた20年でも、経常収支は常に黒字でした。結果として、世界最大の純債権国となっています。その富を活用して、さらに海外ビジネスを拡大していく積極性を失っていません。

(2)IT後進国。米国にも中国にも勝てない

 IT活用のルール作りで政府がリーダーシップを発揮できていないことが致命的です。ただし、製造業のITを活用した構造改革は急速に進みつつあります。脱製造業・ITを活用した成長企業への転換に、ソニーグループやトヨタ自動車、富士通などが取り組み、成功しつつあります。

(3)労働生産性が恒常的に低い

 日本の労働生産性が欧米に比べて低いことは有名です。ただし、それは単純にネガティブとは言い切れません。労働生産性が低いといわれつつ、日本のオフィスワーカーの事務能力の高さ(ミスの少なさ)や日本的サービスの品質の高さは、欧米とは比べものになりません。それが、日本の観光業やサービス産業の強みになっているし、製造業でもきめ細かなカスタム対応やアフターサービスの強みにもつながっています。

(4)引用論文数の低下など科学立国に陰りの兆候

 確かに、一時期に比べて、科学立国としての地位が低下していることは否めません。そうは言っても、世界中で日本車が走り回り、日本のロボットが使われ、日本のアニメや日本食が普及していく流れは変わりません。基礎研究で遅れても、応用分野で巻き返す日本のお家芸は健在だと思います。

(5)災害多発国。地震やスーパー台風の被害が続く

 日本が自然災害の多発国である事実は変えられません。でも、それをバネに日本人は努力を続けています。その結果、日本の耐震建築技術は、世界トップ水準です。その技術が、海外で土木・建設工事を受注する際の強みにもなります。

 日本人は、どうして物事を悲観的に見るのか、不思議に思いますが、それは日本人の良い面でもあります。日本人がみな「日本はすごい」と自画自賛を始めた瞬間、成長は止まります。でも、今はそうなっていません。

<span class="fontBold">窪田 真之(くぼた・まさゆき)氏<br/>楽天証券経済研究所 所長兼チーフ・ストラテジスト</span><br>1984年慶応義塾大学経済学部卒業、大和住銀投信投資顧問などを経て、2014年より楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。2015年より所長兼務。日本株ファンドマネージャー歴25年。年間100社を超える調査取材をこなし、公的年金・投資信託・NY上場ファンドなど20代で1000億円以上、40代で2000億円超の日本株運用を担当。ベンチマークである東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る運用実績を上げてきた。ファンドマネージャー時代の1999~2013年に毎週書いてきた投資情報「黒潮週報」は、英語・中国語に翻訳され、海外機関投資家に配布されてきた。中東・中国・東南アジアに出張し、機関投資家と直接対談してきた経験から、外国人投資家事情に精通。楽天証券では2014年から現在まで、同社投資メディア「トウシル」にて月曜日から木曜日まで「3分でわかる! 今日の投資戦略」を連載。月間240万ページビューを上げる人気コラムとなっている。財務会計基準機構「基準諮問会議」委員、内閣府「女性が輝く先進企業表彰選考会」委員など歴任。著書に、『投資脳を鍛える! 株の実戦トレーニング』『IFRSで企業業績はこう変わる』(日本経済新聞出版社)、『クイズ! 会計がわかる70題』(中央経済社)など。</a>
窪田 真之(くぼた・まさゆき)氏
楽天証券経済研究所 所長兼チーフ・ストラテジスト

1984年慶応義塾大学経済学部卒業、大和住銀投信投資顧問などを経て、2014年より楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。2015年より所長兼務。日本株ファンドマネージャー歴25年。年間100社を超える調査取材をこなし、公的年金・投資信託・NY上場ファンドなど20代で1000億円以上、40代で2000億円超の日本株運用を担当。ベンチマークである東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る運用実績を上げてきた。ファンドマネージャー時代の1999~2013年に毎週書いてきた投資情報「黒潮週報」は、英語・中国語に翻訳され、海外機関投資家に配布されてきた。中東・中国・東南アジアに出張し、機関投資家と直接対談してきた経験から、外国人投資家事情に精通。楽天証券では2014年から現在まで、同社投資メディア「トウシル」にて月曜日から木曜日まで「3分でわかる! 今日の投資戦略」を連載。月間240万ページビューを上げる人気コラムとなっている。財務会計基準機構「基準諮問会議」委員、内閣府「女性が輝く先進企業表彰選考会」委員など歴任。著書に、『投資脳を鍛える! 株の実戦トレーニング』『IFRSで企業業績はこう変わる』(日本経済新聞出版社)、『クイズ! 会計がわかる70題』(中央経済社)など。

日本はピカピカのバリュー株の宝庫だ!

●日経平均3万円台はバブルではない。3大割安株=金融・資源関連・製造業に注目せよ。
●バフェットはなぜ5大商社を5%ずつ買ったのか? 脱炭素・DX時代に飛躍する日本企業は?
●無税のNISAを使わない手はない。
人気ストラテジストが今買うべき銘柄を指南。

<目次>
第1章 ウォーレン・バフェットが日本の5大商社を買う理由
第2章 筆者が選ぶ「もしバフェ」5銘柄
第3章 日本は輝くバリュー株の宝庫である
第4章 脱炭素・DX時代に飛躍する日本企業
第5章 利回り5%、高配当株ファンドを自分で作る「ダウの犬」投資戦略
第6章 三菱UFJは逆バブルの代表
第7章 今ハゲタカがいたら狙われる「含み資産株」
第8章 親会社からTOBがかかってもおかしくない4社
第9章 高配当株投資はNISAを使おう
第10章 「株主優待」を上手に活用しよう

窪田真之(著) 日本経済新聞出版 1760円(税込み)

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