三菱UFJの驚くべきほど低い株価評価
ところが、実際には、三菱UFJは金利低下期でも安定的に高収益を稼いできました。「金利が下がると銀行の収益が悪化する」というイメージとまるで異なります。

三菱UFJは2019年3月期まで、長期金利がどんどん低下していく中でも安定的に高収益を上げています。海外収益の拡大と、ユニバーサルバンク経営(証券・信託・リース・投資銀行業務などの多角化)によって、低金利でも高収益を稼ぐビジネスモデルが出来上がっているからです。私は、コロナがほぼ収束すれば、再び最高益を更新する可能性があると考えています。
財務良好、キャッシュフローも安定的な三菱UFJは、今期(2022年3月期)増配の方針を発表しています。コロナ禍の影響が大きかった前期(2021年3月期)は配当を増やしませんでしたが、それを除けば安定的に増配を続けてきました。来期以降も、増配を行う可能性が高いと予想します。
5000億~1兆円の純利益を安定的に稼ぎ、増配を続けてきたにもかかわらず、三菱UFJは株式市場でまったく人気がなく、株価低迷が続いてきました。結果的に万年、配当利回りが高く、株価収益率(PER)が低い銘柄となっています。

PERの低さ、配当利回りの高さは注目に値します。さらに驚くべきは、株価純資産倍率(PBR)の低さです。PBR0.48倍とは、解散価値と言われるPBR1倍の半分以下です。倒産懸念でもあるのか、と疑われても仕方がないほど低い評価です。
1990年代に日本の銀行は、深刻な不良債権問題を経験しました。この頃の銀行株はPBR0.6倍以下まで売り込まれていました。大手銀行が次々と破綻した時期なので、当然の低評価でした。
あれから20年。不良債権を処理し、合併・リストラを経て、三菱UFJは生まれ変わりました。米国やアジアの銀行を買収、モルガンスタンレーに出資して、海外収益を拡大、ユニバーサルバンク経営を深化させてきました。有価証券の含み益は、2021年3月末時点で3兆7499億円にまで拡大しています。
財務も収益基盤も強固になった今、なぜPBR0.48倍の低評価に放置されなければならないのでしょうか? 買収価値を無視した安値に沈んでいても、誰も気にしない「逆バブル」が発生していると私は考えています。ただし、バブルも逆バブルも永遠に続くものではありません。バブルはいつか崩壊するものだし、逆バブルにもいつか気づく人が現れ、見直される時が来るはずです。
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