あの優良企業がなぜ倒産? 近年、話題になった倒産劇から失敗の法則を探る『なぜ倒産 令和・粉飾編 ― 破綻18社に学ぶ失敗の法則』が発売された。

 本稿では、日経ビジネス編集部のある部員が個人的によく知る倒産の実例から、失敗に学ぶべき教訓を引き出す。企業や個人の名前を特定されるのを避けるため、取材対象者はもちろん、編集部員も実名を明かさずにお伝えすることを、ご了承いただきたい。

 数年前に破産した、とある新興メーカーXサイエンス社(仮名)の倒産劇。倒産に至る経緯は、前回(「売上高が伸びていたのに倒産。某メーカーが破産に至った分岐点」)紹介した通りだ。

 しかし、「倒産するにしても、破産までしなくていいケースだったのではないか?」と専門家は惜しむ。なぜなのか? 倒産前後のエピソードから考察する。

 前回、新興のファブレスメーカー、Xサイエンス社が、なぜ倒産したかをご説明しました。売り上げが伸びていたのに倒産したのはなぜか。どうしたら倒産しないで済んだかについても考えてみました。

 Xサイエンス社が倒産に至った理由は、主に2つありました。1つは、仕入れ先Y社から、仕入れ代金の先払いを求められて応じたこと。もう1つは、輸出先の販売会社から、売り上げを回収できなかったことでした。この2社に対し、経営者のXさんが強い姿勢に出られなかったことには複雑な事情があるようでした。

 最終的にXさんが破産を決意する引き金となったのは、仕入れ先Y社との取引を続けられなくなったことでした。Xサイエンス社は、仕入れの8割以上をY社に頼っていました。バランスシートが傷んでいたところに供給を断たれたことで、Xさんは会社の存続を諦め、ご自身も自己破産する覚悟を固めました。

 しかし、本当にそこまでする必要があったのか、というのが今回の論点です。まず会社を倒産させるにしても、破産を選ぶ必要はなかったのではないか、ということです。

自転車操業が行き詰まって倒産。しかし、倒れ方にも良しあしがある(写真:PIXTA)
自転車操業が行き詰まって倒産。しかし、倒れ方にも良しあしがある(写真:PIXTA)

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