繰り返し「知識の壁」にタッチするには

佐渡島:この、知らないの壁を越える、で「知る」。だいたいみんなここで止まるんです。そこで「行動の壁」で、やってみて、わかって、「できる」。そしてさらに「している」にならないといけなくて。
習慣までいくわけですか。
佐渡島:そうなんです。
なるほど。「できる」じゃまだ足りない。
佐渡島:7回ぐらい、たぶんここ(知識の壁)に触れないと、行動の壁まで行かないんじゃないか、と個人的には思っていて、だから本を作るというのは、「知る」から「やってみる」の壁を越えるための作業として最適だと僕は思っている、ということなんですよ。
個人的にすごくよく分かります。3年前に「介護生活敗戦記」という連載の担当をしまして、書籍(『母さん、ごめん。50代独身男の介護奮闘記』)にまとめさせていただいたんですが、今、まさに母の介護まっさかりでして。でもこの本を作ったおかげで、次から次に来る初体験の壁が、ぐっと低くなった気がします。
佐渡島:そうですよね。ちゃんと学んでいると、「やってみる」まで行けますからね。
余談ですが、そう言われてみると、マンガの「再読性」の高さは学びにすごく効果的なんですね。ぱっと読み始めてすぐその世界に入れる。何度も繰り返し「知識の壁」にタッチしやすい。
佐渡島:まさに。
そういう気付きがあったから、佐渡島さんは何冊も『宇宙兄弟』を扱った本を仕掛けて、出してきたわけですか。
佐渡島:そうです。他社さんの本の話をしてもかまわないですか。
もちろんです。
佐渡島:コルクも組織であり、会社ですから、社員のメンバー全員に活躍してほしい。一方で、やっぱり僕がリーダーシップを示さないといけない。でも、「命令」する感じのリーダーシップは、僕はしっくりこないなと思っていたんです。そんなときに、「いや、ムッタもリーダーだよ」と、みたいなことを長尾彰さん(組織開発ファシリテーター)からうかがって、とても興味を引かれました。ムッタみたいであるというのは僕にとってぴったりでしたので、「僕が目指すリーダー像を言語化したほうがいいな」と思って。そこから『宇宙兄弟 「完璧なリーダー」は、もういらない。』(長尾 彰著、学研プラス)という本を作ったんですね。
それを通して学んだ、と。
佐渡島:そう。リーダーについて、僕がどうあるべきかについて学ぶことができた。その次は、「チームというものがどういうふうになっているのか」ということをすごく俯瞰的な視点で学ぶということでこの本(『宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいく チームの話』)を。
そういうことなんですか。
停滞に悩んだコルク
佐渡島:それでついに今度の本です(笑)。今回は「自分も含めて、チームにいるメンバー全員の強みを引き出してあげたほうがいいよね」ということがテーマです。
本にも原稿をいただきましたが、コルクは「社員が20人を超えたあたりから停滞していた」と。その対応策に悩まれていた。
佐渡島:そうです。僕はコルクの全員に、スペシャルな人間になってほしい。でもだからといって、すごくハードな、崖から突き落として上がってこないヤツはクビにする、みたいな感じはもう時代としても違うし、仮にできたとしても、そういう成長の仕方は誰も幸せと思わなくなっている。そういう緊張感の中で実現した成長は、人生を幸せにする成長じゃないなと思っていたんです。
どういう成長が理想ですか。
佐渡島:本人の中に埋もれている強みが自然と引き出される、それも、仕事を通した人間関係によって引き出される、というふうな形ですね。
集団でも同じことで、業務によってチームの能力が引き出される。だから経営がやることには、業務をうまくできるようにするということと、それぞれの、個々人の能力、力を引き出すということの両方が必要だろうなと思っています。
ですので、仕事とチームを介して、個々の強みを引き出して成長してもらいたい。そうなると、「じゃ、経営者としては、どのような視点でみんなのことを観察すれば、その人の強みが理解できるんだろう。それが分かればチーム編成も合理的にできる」となりますよね。そういう順番で考えて、到達したのがこの企画なんですよ。
なるほど。そういう順番。
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