小山宙哉氏の人気コミック『宇宙兄弟』の登場人物が成長していく過程を「FFS理論」によって読み解き、自分の強み、弱みを理解して、他者理解、組織理解につなげていく『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らない あなたの強み』。

 ヒューマンロジック研究所代表取締役の古野俊幸さんが執筆したこの本は、日経ビジネス電子版の連載「『一歩踏み出せない』あなたをエースにする方法」をベースに大幅に加筆し、FFS理論による簡易自己診断などを加えたもの。読者限定の、「宇宙兄弟で言うと、自分はどの登場人物に似た強みを持つのか」が分かるWeb版診断のアクセスコードが付属する。

 連載をご覧の方はご存じの通り、宇宙兄弟のマンガをぜいたくに引用したこの企画(連載・本)は、小山宙哉氏とタッグを組むクリエイター・エージェンシー「コルク」の協力で生まれた。実は「宇宙兄弟」と「FFS理論」を組み合わせることを提案し、プロデュースしたのは、コルク代表の佐渡島庸平氏なのだ。

 さらにぶっちゃけて言えば、今回のインタビューの聞き手である私(編集Y)は、実は古野さんの連載の担当であり、この本の担当編集者。つまり本記事は自作自演というか、まったくのお手盛り企画だ。もちろん、本を買っていただきたいがゆえの記事でもある。それでも、当代きっての注目編集者であり、仕掛け人でもある佐渡島氏が、何をもくろんでこの企画を始めたのかについては、正面から聞く機会がこれまでなく、企画を進める間にぜひ尋ねてみたいことも多々出てきたので、販促を、いや、反則を承知でインタビュアーを買って出た次第だ。本に興味を持っていただけなくても全然かまわないので、ご一読を賜りたい。

<span class="fontBold">佐渡島 庸平(さどしま・ようへい)</span> コルク代表取締役。2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『16歳の教科書』などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、作家のエージェント会社、コルクを設立。
佐渡島 庸平(さどしま・ようへい) コルク代表取締役。2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『16歳の教科書』などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、作家のエージェント会社、コルクを設立。

よろしくお願いいたします。そもそも、FFS理論を佐渡島さんはどこで見つけたのか、というあたりからどうでしょう。

佐渡島 庸平さん(以下佐渡島):そうですね。でもそのもう1つ前のところから話してもいいですか。

前段がある。うかがいます。

佐渡島:Yさんも編集者ですよね。僕ももともとは講談社でコミックの編集をしていました。編集者という仕事の魅力とは、連載作品を編集しながら、本を編集しながら、「作者が描く世界や人物について誰よりも深く理解する」という行為をすることかなと思っているんですよね。

……とてもそこまでは言えませんが、おっしゃることは分かります。

佐渡島:それで、僕自体が最も大きく変わったきっかけは、やっぱり『ドラゴン桜』(三田紀房作)なんですよ。

落ちこぼれの生徒が、ユニークかつ超合理的な受験勉強で東大合格を目指す、という。

佐渡島:そうそう。目標の立て方、計画の立て方、毎日の過ごし方、習慣のつくり方などが出てきますよね。マンガではそれを(主人公の弁護士)桜木が、生徒に「やれ」と言うわけですけど。担当編集者として資料を調べて、勉強法を自分でも試して、三田さんに「こういうふうにやるといいですよ」と資料を調べて伝えて、僕自身が台詞を原稿に入れる作業とかもやりますよね。校了するまで何度も読み返して、単行本の作業でもう一度読み返して、とやっていると、世に出るまでに7~8回、その言葉、ロジックを目にするわけじゃないですか。

読みますよね。なるほど。

佐渡島:そうすると、「いいアイデアだ、参考にしたい、と思ったはずなのに、自分は全然できていないな」と強く思うわけですよ。だから「これは、改めてちゃんとやろう」という気持ちになる。

 ……実は、みんな、いいアイデアに1回しか触れないんですよね。

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