言葉が持つ「スタートラインを定める」力

藤吉:梅田さんは「言葉」についてはどのように捉えていますか? 思考の解像度を高めることで生まれるものが言葉だ、とは思うのですが、言葉そのものはどうでしょうか。

梅田:僕は言葉って、みんなが共有できる「スタートライン」であるべきだと考えています。企業のビジョンやミッション、キャンペーンのコピーライティング、プロジェクト、あるいは自分自身のやりたいことでも何でもいいのですが、言葉を使うことで人と人との認識がそろいます。みんなでこのスタートラインに立とう、そして同じ方向に進もうという共有認識を獲得する。それが、言葉の役割ではないでしょうか。

藤吉:スタートラインという解釈は面白いですね。ビジョンとかミッションは先にあるものだから、ゴールという感じもしますが、そうではなくてスタートラインだと。

梅田:そうです。線としてスタートが示されれば、走るべき方向もつかめますよね。スタートラインがそろっていないと、前提も、方向性もバラバラです。その人の力を最大限に発揮してもらうために大切なのは、前提と方向を共有して、「あとは自分なりに頑張れ」と言ってあげることでしょう。

藤吉:スタートラインが決まっていない、つまり何も言葉になっていないと、どうなるのでしょうか。

梅田:みんながそれぞれ、バーっと違うところに行ってしまいますよね。「そっちは違うぞ」と言われても、行った人はなぜ止められたのかが分からないんです。これは大企業あるあるなのかもしれませんね……。

藤吉:「これはやっちゃいけません」と×(バツ)だけ示されることになるわけですね。

梅田:はい。そうなると、Do not Listしか生まれなくなってしまいます。そして、×が付いていなかった未開の地に到着した人まで「そんなのダメに決まってるだろ」と叱られる。

藤吉:理由も分からないまま、ただダメと言われる。

梅田:Do not Listだけでは社員の制御もできませんし、その人の潜在能力を最大化することもできません。だから、スタートラインを作って、何の躊躇(ちゅうちょ)もなく行けるところまで行かせるほうがいい。スタートラインを定義してあげるのが正解だと思っています。

藤吉:「みんなここからあっちに向かって行こうね」という考え方は、分かりやすくていいですね。

 今、梅田さんはスタートラインとしての言葉とおっしゃいましたが、目指す目標やゴールとしての言葉では、代替が利かないものでしょうか。

梅田:マーケティングの世界では、課題は理想と現状のギャップとして定義されます。そのため、理想だけが掲げられても、現状の認識がバラバラだと、解決すべき課題も定まりません。当然、チームメンバーが取り組むこともバラバラになり、力を合わせることもできませんよね。これは個人の問題ではなく、構造の問題です。せっかく新しいことをやって未開の地に到達したのに、「そんなのダメに決まってるだろ」と叱られる。それはやる気をなくしますよね。

藤吉:だから、スタートラインからダッシュして行った場所はOKにしてほしい、と。

梅田:はい。スタートラインが決まって同じ方向に走り出せば、間違えようがないはずです。そこからは自己判断でいいという世界観が大事です。それが個人の才能を生かすこととイコールであるとすら思います。そのために、僕は、プロジェクトが始まる際、誰よりも早く深く考え、スタートラインとしての言葉を定義するように心がけています。

藤吉:スタートラインになることが、言葉の持つ力の1つなんですね。

梅田:はい、「相手を信じ、許容する力」とも言えますね。

藤吉:これができていない企業は多いですか。

梅田:多いですね。端的に言うと「社内が盛り上がる言葉」の不在です。「こうあらねばならぬ」というような束縛する意味合いの言葉しかないと、社員はワクワクしません。エンパワーメントできる言葉を生もうとするスタンスが大事だと思います。

藤吉:その意味ではやっぱり、梅田さんにとって「言葉にする」というのは「コピーライティング」に近いかもしれませんね。

梅田:自己認識するために言葉を使う、という感じでしょうか。個人が持っている「こういうことがやりたい」「こんなふうに生きていきたい」という思いと、法人という人(組織)が持っている言語化された思いがそろっているのが一番美しいですよね。社会が持っている方向性も重要でしょう。この、個人・企業・社会のベクトル合成を意識すると、一気に歯車が動き出しますよね。

(文=梶塚美帆/写真=尾関祐治)

第3回に続く

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