具体化ではなく高解像度化が、響く言葉に不可欠な理由

梅田:もちろんです。具体は、事象や出来事に近いですよね。その一方で、解像度は細かさです。「2030年の未来を思い描く」ということで考えてみましょう。2030年を漠然とイメージするのが抽象。2030年に生きている人々がどう暮らし、何を感じているかまで思いをめぐらせるのが解像度を上げるということ。具体は、2030年という時点で繰り広げられている出来事や行動と言えると思います。

藤吉:なるほど。確かに企業理念でも、抽象度が高いままだと従業員が内容を理解できなくて指針にならないし、具体的過ぎると今度は制約が多過ぎて身動きが取れなくなりそうです。

梅田:そうなんです。「抽象的なことを解像度高く書く」さえできていれば、一言でも十分、何を目指す企業なのかを共有できます。よく、ミッション、ビジョン、バリューが必要だといわれますが、1つの会社に大事な言葉が3つもあるのは、多過ぎると感じることもあります。それらがすべて入っている一言を作りたい。マーケティング・メッセージや、プロダクト・メッセージでも同じですね。

藤吉:「抽象的なことを解像度高く書く」ことで、その一言が力を持つわけですね。

梅田:はい。僕としては、抽象的なものをいかに解像度高く文章に落とし込めるかが一番大事で、文章技術のすべては、そのためにあるんじゃないかとすら思います。あとは、言葉を生み出す人が、その高度な両立は可能であると信じることが重要です。

藤吉:梅田さんのお話を伺っていて、「解像度を高くする」というのは、例えば昔のテレビのように粗く見えているものから、今の高画質テレビに変わる、といったイメージなのかなと思いました。「鮮明にしていく」というような。

梅田:鮮明にしていくというのはとても近いですね。その人が本当に言いたいことや、言わなくちゃいけないことって、本人の中にはあるはずです。ただ、どう言葉にしていいか分からないし、伝え方も分からない。まさに、輪郭がぼやけている状態。

藤吉:言いたいことが薄ぼんやりとは見えているけれども言葉にできないから、言いたいことそのものも分からないような気持ちになってしまっている。

梅田:はい。その解像度を上げるために、前回お話しした、空白地帯を埋めることが役立ちます。テレビ番組の「パネルクイズ アタック25」をイメージしていただくと分かりやすいのですが、だいたい見えていても大事な部分が隠れていると、それが何なのか理解できないんです。

藤吉:梅田さんのお話、とても勉強になります。僕は今まで、「抽象」と「具体」という感覚で文章を書いていました。抽象的な概念だと分かりにくいから、事例や数字などを具体的に挙げていくことが多かった。でも、もう1つ、そこにあるものの解像度を高めるという方法があるんですね。

<span class="fontBold">藤吉豊(ふじよし・ゆたか)</span><br/>文道 代表取締役。有志4人による編集ユニット「クロロス」のメンバー。日本映画ペンクラブ会員。 編集プロダクションにて、企業PR誌や一般誌、書籍の編集・ライティングに従事。編集プロダクション退社後、出版社にて、自動車専門誌2誌の編集長を歴任。 2001年からフリーランスとなり、雑誌、PR誌の制作や、ビジネス書籍の企画・執筆・編集に携わる。文化人、経営者、アスリート、グラビアアイドルなど、インタビュー実績は2000人以上。 2006年以降は、ビジネス書籍の編集協力に注力し、200冊以上の書籍のライティングに関わる。大学生や社会人に対して、執筆指導なども行っている。著書に『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』『文章力が、最強の武器である。』がある。
藤吉豊(ふじよし・ゆたか)
文道 代表取締役。有志4人による編集ユニット「クロロス」のメンバー。日本映画ペンクラブ会員。 編集プロダクションにて、企業PR誌や一般誌、書籍の編集・ライティングに従事。編集プロダクション退社後、出版社にて、自動車専門誌2誌の編集長を歴任。 2001年からフリーランスとなり、雑誌、PR誌の制作や、ビジネス書籍の企画・執筆・編集に携わる。文化人、経営者、アスリート、グラビアアイドルなど、インタビュー実績は2000人以上。 2006年以降は、ビジネス書籍の編集協力に注力し、200冊以上の書籍のライティングに関わる。大学生や社会人に対して、執筆指導なども行っている。著書に『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』『文章力が、最強の武器である。』がある。

次ページ 言葉が持つ「スタートラインを定める」力