100万円で買えるモノが30年後に134万円

 一方、物価は少しずつ上がっていくと予想されています。複数の大手調査機関によると2030年ごろまでの物価上昇率は年率平均0.5%~1%程度という予測です。簡単に言うと、モノやサービスの値段が1年ごとに平均0.5%~1%くらいずつ上がると予測されているわけです。

 仮に0.5%ずつ物価が上がった場合、今100万円で買えるモノやサービスが10年後には約105万円、30年後には約116万円出さないと買えなくなります。物価上昇率1%の場合は10年後に約110万円、30年後は約134万円にもなります。

(出所)『40代から始める 攻めと守りの資産形成』(日本経済新聞出版)より作成
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 「老後のため」のはずだった預貯金が完全に物価上昇に負け、購買力が下がってしまいます。これでは貯蓄の意味がありません。

物価に負けない「守りの資産運用」

 私が考える真の資産防衛とは「見た目の元本を減らさないこと」ではなく、「物価上昇に負けないこと」、すなわち「実質的に元本を減らさないこと」です。実は、大きなリスクを取らなくても物価に負けない「守りの資産運用」は可能です。

 例えば、「物価には負けたくないが、投資はできるだけ少なくしたい」という場合は、金融資産の10%~20%だけ株式投資信託に、残りは預貯金にしておく方法もあります。預貯金部分が物価上昇に負けても株式投資信託の利益で穴埋めして、資産全体では物価上昇と同程度に増やす計画です。

 詳しい解説は省きますが、平均分散モデルを用いて、リスク水準別に最適ポートフォリオ(あるリスク水準においてリターンが最も高い投資先の組み合わせ)を計算した国内株式の期待リターンは5%となります。

 これを使って具体的に考えると、金融資産10%だけ日本株投資信託に、残り90%はゼロ金利の預貯金にすると、資産全体の期待リターンは0.5%。株式投資信託の割合を20%にすれば資産全体の期待リターンは1%です。外国株式ならもう少し期待リターンが高くなります。

(出所)『40代から始める 攻めと守りの資産形成』(日本経済新聞出版)より作成
(出所)『40代から始める 攻めと守りの資産形成』(日本経済新聞出版)より作成
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金融資産の1割~2割を投資信託にして防衛

 「守りの資産運用」ですから、何も金融資産の大部分を投資に充てる必要はありません。全体の1割~2割を株式投資信託にするだけで、ある程度の物価上昇に対応できるのです。これくらいなら、投資未経験者でも割と抵抗なく実践できるのではないでしょうか。

 仮に、実際の物価上昇率が金融資産全体のリターンより高くても、物価上昇による預貯金の目減り分をある程度は相殺してくれることが期待できます。人生GDPを増やすためというよりも、インフレに対するショックアブソーバーとして投資を活用するわけです。まさに「守りの投資」です。

日経BOOKプラス 2022年6月2日付の記事を転載]

人気ストラテジストが教える、
景気に左右されず、豊かに生きる新ルール。


・長期投資は「中リスク・高リターン」
・投資信託のコストはお金だけじゃない
・つみたて投資、毎月いくらずつ? 必要な利回りは?
・年金、低リスク投資。複数の守り方を身につける
・「新2000万円問題」を回避する3段活用
……など、長期視点の戦略が満載。

井出真吾(著) 日本経済新聞出版 1650円(税込み)
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