着目すべきは株価動向
よく「毎月1万円など、定期定額のつみたて投資は長期的に有利」とされますが、私は長期保有が前提なら今後は一括投資のほうが有利だと考えています。
つみたて投資が有利とされる主な理由は「定期定額の投資信託の買い付けを続けると、株価が上昇したときは投資信託の購入口数が少なくなり、株価が下落した場面では購入口数が多くなるため、平均購入単価を抑えることができる」ということ。いわゆる「ドルコスト平均法」です。
もっともらしく聞こえますが、実際につみたて投資と一括投資のどちらが有利かは株価の動向次第です。株価が下落する局面や一進一退(もみあい)のときはつみたて投資が有利ですが、株価上昇局面では一括投資が有利になります。
株価上昇局面では一括投資が有利
データで確認しましょう。図1は(1)1989年末スタート、(2)2009年末スタートで一括投資とつみたて投資を比較したものです。
つみたて投資は毎月1万円、一括投資は「2021年末時点(最終時点)における、つみたて投資の累計投資額」をスタート時に一括投資したと仮定しました(1989年末は385万円、2009年末は145万円)。投資対象は日本株(TOPIX<東証株価指数>、配当再投資)です。
まず、1989年末スタートの場合は、つみたて投資が有利でした。日本株は1990年~2012年まで下落基調だったため、一括投資は元本割れの状態が続きました。この期間の投資元本が一括投資よりも少ないつみたて投資は傷が浅くすみました。
その後、2013年以降の株価上昇局面で一括投資は元本を回復するのがやっとでしたが、つみたて投資は毎月1万円ずつ投資元本を追加したことが奏功して株価上昇の恩恵をより多く受けます。つみたて投資が有利とする解説でよく見るのはこのケースでしょう。
これに対して、2009年末スタートはまったく様子が違います。
株価が下落基調だった2012年ごろまでは一括投資の元本割れが続きましたが、2013年以降は資産額が大きく増えました。つみたて投資も順調に資産額を増やしたものの、一括投資との差を縮めることはできませんでした。
決定的な違いは、株価上昇の起点となった2012年末頃の資産額の差です。この時点で一括投資の資産額はつみたて投資の3倍以上あったため、その後の株価上昇で雪だるま式に資産額が増えたわけです。
このように長期であっても、株価が上昇トレンドの場合は一括投資のほうが有利になるのです。
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