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リーマン・ショックを予見し、2019年時点で「2020年にも未曾有の危機が到来する」と予言していた世界的な投資家のジム・ロジャーズ氏。5月下旬に日経BPから出版する新刊『危機の時代 伝説の投資家が語る経済とマネーの未来』(電子書籍は先行配信中)では、大恐慌からリーマン・ショック、新型コロナウイルスまで、世界を震撼させてきた、さまざまな危機の本質に歴史的な観点から迫り、危機の際にどのように考えて行動すべきかについて詳細に語っている。今回の記事では、新型コロナウイルスの感染拡大による環境変化を受けた、ロジャーズ氏の最近の投資に対する考え方を紹介する。

 ジム・ロジャーズ氏の投資スタイルの1つの特徴は、「危機などで価値が大幅に下がり、割安になっている投資先を見つけて買う」ことにある。危機の影響が大きく、市場で売り込まれている一方で、回復局面になると価値が大幅に高まりそうなものを狙って投資する手法だ。「みんなが売っている時に買い。みんなが買っている時に売る」ような考え方である。ロジャーズ氏はこのような投資スタンスで、過去に繰り返されてきたさまざまな危機の際に、たびたび大きな利益を上げてきた。

 その意味で、ロジャーズ氏が今投資チャンスがあると考えている業界は、航空会社や鉄道などの交通機関、観光、旅行、ホテル、外食などだ。「これらの業界は殴打され、破壊されている。だから世界中でチャンスを見つけやすい」。

 例えば、航空業界。2020年のゴールデンウィーク(GW)の成田空港と羽田空港の出入国者は、前年のGW時期と比べて99%以上減少した。日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)に限らず、世界中の航空会社が多くの国際線路線の運航を休止しており、いつ需要が回復するかは見えない。

 資金繰りに窮する航空会社が相次いでおり、今後破綻するケースが増えることが懸念されている。もちろん「アフターコロナ」の世界でも、航空会社にとっては厳しい経営環境が続く可能性が高そうだ。

「危機の時こそ、投資のチャンスがある」と語るジム・ロジャーズ氏(写真:的野 弘路)

 絶望的に思える状況で投資家の間に不安が広がり、航空会社の株価は大幅に下落。文字通り低空飛行が続いている。新型コロナウイルスの感染が拡大する前の1月中旬と比べて、日本航空やANAホールディングスの株価は3~5割も下がっている。米国の航空大手に至っては、株価が7~8割下落しているケースも目立つほどだ。