過去問50年分を、どのように解いたのですか?

西岡:最初は普通に自力で解きます。そして解いた後、さまざまな予備校が出している解答例を読み込みます。論述問題だと、それぞれの予備校の解答例も微妙に違っていて、「駿台予備校の解答例には、河合塾の解答例にはない、こういう要素が盛り込まれているな」とか、「代ゼミの解答例のこのポイントは、ほかの予備校にはないな」など、比較して気づくことはいろいろあります。

 そのうえで、自分の最初の解答をバージョンアップします。それも1つだけでなく、いくつもの解答をつくります。1つの問題について、5パターンくらいの解答をつくって、ノートに書きました。それらを最後、先生や友達に見てもらって、コメントをもらって、またノートにメモします。

 こういう方法で、過去問50年分を解きました。1つの問題に多様な解答を用意し、第三者からコメントをもらう、ということをノートのなかで繰り返しました。

 そのうち、解答例のなかの加点ポイントが見えてきました。採点者の考えていることが分かってきて、「採点感覚」がつかめてくる。これは大きかったと思います。そのプロセスで「つながりが必要」ということに気づいていけた、という感じです。

西岡さんが受験生時代、東大の過去問50年分を解いたノート。記述式の問題には、それぞれ5パターン程度の解答例を用意した
西岡さんが受験生時代、東大の過去問50年分を解いたノート。記述式の問題には、それぞれ5パターン程度の解答例を用意した
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友達がいない受験生は、成績が伸びない

「他者視点」の重要性ですね。西岡さんは「独りよがりな勉強ではいけない」ということを、『東大メンタル』で繰り返し強調されていました。

西岡:はい。その文脈でいえば1浪した年の最大の敗因は、一人で勉強していたことです。孤独に黙々と受験勉強していて、友達が全然いませんでした。

 2浪した年は、ノートを見せてもらったり、勉強法を受験生仲間に尋ねたりするなど、意識して友達を増やすようにしました。そうやって「他者とつながる」ことを意識したとき、「成績が上がった」という感覚は強くあります。

実際、2浪した年は全国模試4位、偏差値77.8を記録して「偏差値65の壁」を突破。東大合格を果たしました。

全国模試4位、偏差値77.8を記録したときの成績表。高校3年生のときの偏差値35(<a href="/atcl/gen/19/00087/050600224/">前回</a>参照)から、学力を大きく引き上げた
全国模試4位、偏差値77.8を記録したときの成績表。高校3年生のときの偏差値35(前回参照)から、学力を大きく引き上げた
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西岡:やはり、ほかの人と話していると気づくことがあるのですよね。教科書で勉強したことのなかに新しい気づきが生まれて、社会とのつながりが見えてくる。「このシェールガスって、最近、テレビでもニュースになっていたよね」だとか、そんな何気ない友人との言葉が、本で読んだ知識の理解を深めてくれる。こういうことってやっぱり、一人きりではなかなか気づけないんですよね。

それは社会人になってからも、いろんな場面で経験することである気がします。

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