超過死亡の減少を胸に、「次」を考えよう
意図的かどうか分かりませんが、ある意味「無策」でもたついている間に、反ワクチンが自壊し、接種を求める世論が強くなり、供給量が増えて、言い方はものすごく悪いですが他国でのワクチンの「実験」が進んで、その結果を利用できる。しかもなんだかんだいって、ワクチンを買い込めるお金もまだ持っているくらい豊か。そんないいところ取りのポジションに、もしかしたら立っている……のかもしれないですね。ただ、供給が潤沢になったとして、問題は接種の仕組みがうまく動くかどうか、ですが。
峰:そこはYさんが直に取材されたほうがいいでしょう。自治体によってものすごく差があるようですが、東京の現場で先端的な仕組み作りをやっている方がいますよ。まだメディアには出られていませんが、ご紹介しましょうか。
あ! ぜひお願いいたします。
峰:と、ここまでの「無策」ぶりはもちろん褒められたものではないと思います。が、じゃあ世界の他の国はどうなんだと見てみると、どこも大変なことになっていたわけです。米国にしても、大量のワクチンが無駄になったこともありましたし。
なんだか、世界の中で日本だけダメなんだ、みたいな気がしていたんですけど。
峰:それは比較によるわけです。何をもって対コロナ禍の実績を評価するか。例えば死亡者の数で言ったら、「劣等生」と言わざるを得ない英米や欧州各国と、「優等生」である台湾、韓国、ニュージーランドに分けたら、日本はとても優等生に近い側にいる。一方でワクチンの接種率で見ると、こんどは優等生と劣等生が逆転する。先進国、といわれる国が接種率では優等生なので、そこも悔しいわけですね。
あ、そうか。
峰:見方によって優等生グループは変わるので、そこを認識しないといけませんね。私、決して「日本万歳」論者じゃないですが、超過死亡者数で見たら日本はとんでもない優等生ですよ。
超過死亡。「普通の年より死んだヒトがどれくらい多いか少ないか」でしたっけ。
峰:フィナンシャル・タイムズの図が分かりやすいと思います(こちら)。
日本は世界ダントツのマイナスですね。新型コロナが流行した年なのに。
峰:デマに惑わされず、自分自身が社会のため、他の人のために、自らの正当な欲求を抑えて「自粛」し、マスクと手洗いを励行した結果の輝かしい実績だと思います。……まぁこの結果が逆に、「コロナは風邪のようなものだ」とか「コロナで騒ぎすぎだ」という人を生み出してしまう結果にもなっているんですけどね。
あああ。せつない。
峰:他国から見習うべきことは見習いつつ、個々人は今まで行ってきたことを黙々と続け、現場で踏ん張ってくださる方に感謝して、デマや他人の努力を攻撃する人はそっと無視。我々は我々のペースで淡々と進んでいくんじゃないのかな、って思っています。そして、醒めた頭で、mRNAワクチンを含むワクチンの開発能力の強化や検査体制の充実化など、新型コロナウイルスの「次」の、必ずまたやってくる感染症流行に対する対策を、周到に考えていくべきだろう、と。
打つ前に知っておくべき
これだけの真実
ワクチンのメリットとリスク
新型コロナの致死率はインフルエンザ並み、なのか?
「核酸ワクチン」は去年までは「遠い未来に実現するワクチン」だった
ワクチンの「効く」「効かない」はどこで見る?
「高齢者だけ厳密に」はなぜ非現実的か
新型コロナを巡る数々の話題を、専門家の峰宗太郎先生と、ド素人代表の編集Yの対談形式でまとめた日経ビジネス電子版で大好評の連載が、大幅加筆を経て新書になりました。
「自分の頭で考える」ために必要な知識に絞り、専門家ではない方でも、ネットやメディアが伝える情報の吟味ができるようになる本です。ワクチンの仕組みやそのメリット、リスクをしっかり理解していないと、最悪の場合「日本だけが新型コロナワクチンを打てない国」になってしまうこともあり得ます。無用な不安にさよならして、誰かの話に簡単に流されたりもしなくなる。新型コロナとインフォデミックを遠ざけ、たんたんと勝ち抜くために必要な知識を凝縮しました。是非ご一覧ください。
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