:はい。ワクチン、特にmRNAワクチン(米ファイザー・独ビオンテック、米モデルナなどが開発)がロールアウト(普及)して望外の好成績が実証(※)されて以降、局面は一変しているんですね。これまでの戦いが塹壕(ざんごう)戦だったとすれば、ここから先は航空戦です。

おお、ミリオタの私にご配慮ありがとうございます。とってもイメージが伝わります。もうマジノ線を引っ張って守る時代じゃないんだと。でも対コロナでは、例えばどんなふうに局面が変わるんでしょうか。

※イスラエルでのワクチン接種についての参考記事:
ファイザーのワクチンはイスラエルでCOVID-19を防いだか?
全国規模のワクチン接種でも臨床試験とほぼ同様の成績→こちら

感染抑止の優等生が、ワクチン接種では劣等生に

:ちょっと意外な面から入りますと、これまで感染抑止の「優等生」だった国と「劣等生」だった国が、ワクチンの接種では逆転しています。

え?

出所は<a href="https://ourworldindata.org/covid-vaccinations" target="_blank">Our World in Data</a>
[画像のクリックで拡大表示]

ええっ、意外。台湾はどうしちゃったんでしょう。韓国もニュージーランドもこの低さ。逆に、まあイスラエルは別格としても、米英はめちゃくちゃなハイペースですね。改めて驚きです。

:そうなんです。台湾の政府関係者は「中国の妨害があった」などとにおわせていましたし、どこの国にも固有の事情はあると思います。背景は私には分かりません。が、感染を抑えていること、すなわちここまで「成功していた」ことが、ワクチンを急がなくてはいけないという「危機意識を弱めた」可能性はあるのではと見ています。

うーん……。しかし、ワクチンの接種率が上がらないと、国境を開けたときにマズいことになりますよね。

:はい。まさしくそこです。このままだといつまでも国境を開けず、いつまでもキツイ水際対策に加え、いざというときに備えてびくびくし続けなくてはならないですね。すなわち、国際間の経済活動が復活するときに、ワクチンの接種率が低い国は後れを取ることになりかねません。

貿易の依存度の高い国には大問題ですね……。

:感染抑制に「大失敗」した米国、英国がここにきて「大逆転」とも言えるような様相を見せているのも、初期の戦いで失敗したことが効いているのかもしれません。

どちらも「最初はぼろぼろだけど、後から圧倒的に勝つ」という戦い方をした国ですよね。

:大失敗はしているんですが、諦めず、「最終的に勝てばいい」という、腹の据わり方というのを感じます。会社もそうじゃないかと思いますが、戦略があって、トップが本気で指導力を発揮して、国民の側に危機意識があると、状況は一変するんですね。

 トランプ大統領の時はなかなか接種が進まなかった(政権交代時で約1600万回)のに、バイデン政権になって「就任後100日以内に1億回接種」と宣言して、あっという間に達成したので「2億回」に繰り上げて、そして、92日目に2億回達成ですからね。

うにゃうにゃの「う」で止まっちゃった我々の政府にはそういうことを期待できるんでしょうか。こういうことを峰先生に伺っていいのかどうかも分かりませんが、グチ交じりに聞きたくなってしまいます。

:自分の知見の範囲、客観的な材料から推測することしかできませんが、いいですか。

もちろんです。

次ページ ワクチン接種は案外順調に進むとみています