入園料(平日、1デーパスポート)1人8200円。家族4人なら約3万3000円。この価格を「高い」と思うだろうか。値上がりを続ける東京ディズニーリゾートだが、コロナ以前の2019年までは数多くの外国人でにぎわい、過去最高入園者数も記録した。外国人観光客が、あえて“日本のディズニー”を選んだ、その本当の理由とは。『安いニッポン 「価格」が示す停滞』(日本経済新聞出版)より抜粋する。

 「えっ、入園料だけでこんなにするの」

 2018年7月、新婚旅行で訪れた米カリフォルニア州で幸せの絶頂にいた会社員の竜沢暁宗さん(26)は、気持ちが一気に現実に戻った。

 驚いたのは、旅行会社経由で買ったディズニーランド・リゾートの入園料だ。1人約1万6000円で、日本の2倍以上(当時)する。食事をし、お土産などを買っているとどんどんお金が飛んでいく。

 「日本も高いと思っていたけど、それ以上だ」

 結局、1週間の滞在費は2人で80万円以上かかった。竜沢さんは嘆く。「ホテルで飲む朝食のコーヒーも日本の約2倍。一度きりの新婚旅行だと自分に言い聞かせたけど……」

タイ人観光客「日本はいつもコスパがいい」 

 片や、千葉県浦安市のJR舞浜駅。

 新型コロナウイルスが日本で感染拡大する前の2020年1月に訪れると、色とりどりの風船や大きな袋を持った大勢の家族連れが行き交っていた。「夢の国」である東京ディズニーリゾート(TDR)を背に、みな幸せそうな表情を浮かべている。夕暮れ時の舞浜駅前ではおなじみの光景だ。

 タイから来たという20歳代の女性3人組にTDRを選んだ理由を聞くと、

 「中国に行くより安いし、それでいて日本はキャストのクオリティーも高いし大満足」と話してくれた。

 「近くのホテルを予約しても合計約2万円かからなかった。日本はいつもコスパ(コストパフォーマンス)がいい」と笑顔で去って行った。

世界6都市で日本は最安値クラス

 このギャップの理由を解き明かそうと、世界のディズニーランドの大人1日券(当日券、1パークのみ)の円換算価格を調べた。

 新型コロナウイルスによる各パークの再開状況を考慮して、同じ日で比べられる2021年2月中旬時点の価格で比較した(為替は1月下旬時点。カリフォルニア州は無期限閉園中のため2019年、パリは再開予定だった21年4月の価格とする)。

 すると日本の8200円に対して、米フロリダ州は約8割高い約1万4500円(約140ドル)で、カリフォルニア州やフランス・パリ、中国・上海も1万円を超えた。ディズニーランドがある世界6都市で、日本は最も安かった。

出典:『安いニッポン 「価格」が示す停滞』から
出典:『安いニッポン 「価格」が示す停滞』から

 もちろん敷地の広さなど規模はそれぞれ違うが、「日本より狭い」と言われる香港でも約8500円(639香港ドル)だ。この傾向は、新型コロナウイルスの感染拡大前からずっと同じである。むしろ日本は2020年3月までは7500円だったため、米国の約半額程度だったのだ。

 フロリダや上海、パリは需要に応じて価格を柔軟に変える「ダイナミック・プライシング(価格変動制)」を取り入れており、日によって約3000円や約5000円の振れ幅がある。フロリダは最も安い日でも約1万2000円だが、上海では約6400円という日も数日だけあった。日本も2021年3月からダイナミック・プライシングを導入しているが、平日と週末の差額は500円しかない。

続きを読む 2/3 約8割がディズニー入園料を「高い」と回答

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