次世代の繊維で、アパレルの大量廃棄問題に挑む
世界的に関心の高まるバイオプラスチックだが、日本における導入は進んでおらず、国内のプラスチック投入量全体に占める割合は、2018 年時点で0.5%程度にとどまっている(「バイオプラスチック導入ロードマップ」環境省ほか、2021年)。
政府は、2030年までに、バイオマスプラスチックの使用量を約 200万トンに拡大することを目指している。製品の出荷量ベースなら、2018年の7.2万トンの約28倍にあたる。バイオワークスはじめ、関連企業にとって大きなビジネスチャンスになることは間違いない。
今後、バイオワークスが力を入れる分野は、ポリ乳酸の繊維と繊維製品だという。「独自の添加剤で染色性も向上し、ポリエステルと同等の機能性を実現しました。アパレル業界の大量廃棄問題に対するソリューションという、新たな価値を提案したい」と、前出の笹木氏は意気込む。
ポリエステルは繊維生産量の約6割を占める。端切れや古着を回収し、繊維として再生する「リサイクル・ポリエステル」なども登場しているが、ポリ乳酸の繊維へのシフトも、アパレル企業におけるSDGs施策の有力な選択肢になりそうだ。
まずは抗菌性がメリットになるタオルや靴下を商品化し、次に肌着にも広げる予定。使い終わったタオルや靴下を消費者から回収し、コンポストで処理する仕組みを構築することも検討しているという。
付加価値の高い靴下や肌着といえば、島精機の編機の得意分野。マスクに続き、島精機とコラボレーションする可能性も高そうだ。
次世代のプラスチック、ポリ乳酸の繊維と島精機の技術力のシナジー効果で、アパレルのサーキュラー・エコノミーを促進する――日本の企業が拓(ひら)く未来に期待したい。
日本が誇るイノベーターの揺るぎない信念を伝える
『アパレルに革命を起こした男』梶山寿子著
エルメス、フェラガモ、プラダ……名だたる高級ブランドから、日本のアパレル最大手のユニクロまで、世界のアパレルメーカーが信頼を寄せる編機メーカーが和歌山県に本拠を置く島精機製作所だ。
その創業者、島正博氏は、10代から天才発明少年として知られ、これまでに個人で約650件もの特許を取得。全自動の手袋編機の開発をはじめ、1995年には、機械がプログラムに従って、1着分のニットをまるごとデザイン通りに編み上げる、無縫製型のコンピューター横編機「ホールガーメント編機」を発表。その画期的なイノベーション力で“紀州のエジソン”と称される。
「『世界初』『世界一』にこだわる」「絶対にできると信じる」「時代の先の先を読め」──。
80歳を超えた今も常に手を動かし、方眼紙と鉛筆を傍らに置き、次の発明に意欲を燃やす島会長は、揺るぎない信念のもとで挑戦を続けてきた。技術開発に人生をかける島会長の情熱とその発想の秘密を、長年にわたり取材を続けてきたノンフィクション作家がつづる。
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