常に判断を迫られるのがリーダーという存在だ。だが、リーダーといえども、経験したことのない状況の中では大きく迷う。
先が見通せない時代、経営者やビジネスパーソンも日々、重要な決断を迫られている。では、どうすれば正しい判断が下せるのか。そもそも、判断力を強くする方法はあるのか。
一橋ビジネススクール教授で『ストーリーとしての経営戦略』などの著書がある楠木建氏と、経営コンサルタントで、このほど書籍『迷えるリーダーがいますぐ持つべき1枚 の未来地図』を出版した横田伊佐男氏が、激変の時代を乗り切る経営者の習慣、さらに戦略思考を磨く方法などを巡って語り合った。
経営環境の激変で問われる経営者の力量
横田:新型コロナウイルスの感染が拡大し、多くの企業が問題に直面しています。例えば、インターネットが社会に大きな影響を与え、ビフォアインターネット、アフターインターネットという言葉が生まれたように、新型コロナも、アフター新型コロナという世界を生むきっかけとなりそうです。ただ、企業というのは、すぐには変化できない。今回、本の中でもタイタニック号が氷山を見つけてもかじを切るアクションに時間がかかったことを例に、危機を感じながら変化できない企業が多い、特に大きい組織ほど難しいと指摘しました。なぜ、変化ができないのか、先生はどうお考えですか?
楠木:新型コロナでも氷山でも、何か外的な、わりと大きめなショックがあったときは、それに対応する時間がすごく圧縮されます。時間的に圧縮がかかると、優れた経営者でも対応できることは限られます。こういうときこそ経営者の能力が露呈します。外的なショックがくる前に、自分たちの船をこっちに持っていこうと考えて動かしているかどうか。つまりは戦略があるかどうか。外的なショックが発生したときは、この差が大きく出る。結局、「さあ大変だ」とリストラをやるんじゃなくて、優れた経営者であれば極論すれば毎日リストラをやっているようなものです。「さあ危機だ、どうしようか」という人に比べて、使える時間が長いんですね。
横田:経営者の意識の差が大きい、と。
楠木:煎じ詰めれば、戦略的な意図が事前にあるかどうかだと思います。

1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年から現職。専攻は競争戦略とイノベーション。プライベートのバンド活動も有名。
主な著書に 『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)『すべては「好き嫌い」から始まる』(文芸春秋)『「仕事ができる」とはどういうことか?』(山口周氏との共著、宝島社)(写真/安部まゆみ、以下同)

東京都出身。横浜国立大学大学院博士課程前期経営学(MBA)修了および同大学院統合的海洋管理学修了。国内外の大手企業でマーケティング部門の責任者を歴任。横浜国立大学成長戦略センター研究員、日経ビジネス「課長塾」講師。最近はボクシングに打ち込む。
主な著書に『迷えるリーダーがいますぐ持つべき1枚の未来地図』(日経BP)『最強のコピーライティングバイブル』(ダイヤモンド社)『ムダゼロ会議術』(日経BP)
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