見えない価値をどう可視化するか

渋澤:最近、経営の世界で「パーパス」という言葉がはやっています。パーパスとミッションは、日本語にすれば同じ「企業の存在意義」ですが、ミッションは「What」(何をしているか)なのに対し、パーパスは「Why」(なぜしているのか)です。

 コロナ禍がある中で、なぜ、我が社は存在するのか、なぜ自分はこの会社に勤めるんだと問い、その答えが返ってくることはすごく大事です。

守屋:私は企業幹部や社長候補向けの研修をしているのですが、「あなたの会社の経営理念を書いてみてください」と課題を出すと、ほぼ100%の人は書けません。3行しかない経営理念すら書けなかったりします。この意味で「Why」「Why we do?」が抜け落ちているのかもしれません。そういう企業がどういう方向に行くかといえば、数値目標に行ってしまう。

渋澤:そうですね。

守屋:企業が『論語』的な側面を持つために重要なのは、数字ではなく、自分たちの言葉を持つことなのかなと思います。さわかみ投信取締役会長の澤上篤人さんに教えていただいたんですが、とにかく数字ではコミュニケーションをとれない。我々はなぜこういうことをしているのかという言葉があって初めて、様々なコミュニケーションが成り立つ。他よりも稼いでいますとか、昔より稼いでいますという価値観とは違う価値観を持てば、自分の仕事をできるようになる。これって『論語』だなと思いました。

 健さんが会長をされている、コモンズ投信の場合は、どのような基準で投資先を選んでいるのでしょうか。

渋澤:コモンズ30ファンドは、世代を超えた投資を行っています。そういう意味で、先に触れたように、持続可能かどうかが重要です。事業環境が変わっても進化できる会社に投資したいという思いでやっています。

守屋:進化できるかどうかは、どうやって見分けるのですか。

渋澤:数値化が可能な財務的価値は、外から見える価値です。しかし、売り上げや利益は過去の取り組みが表面化して見えてきたもので、氷山の一角にすぎません。ほとんどの価値は水面下に沈んでいて見えません。

 例えば、なぜその会社は競争力があるのか。それは経営力なのか。では、なぜその会社は経営力があるのか。あるいは対話力や企業文化というのもありますが、これらも数値化しにくく、なかなか見えにくい。

 だから、私たちは投資委員会を設けて、いろいろな角度から、多数の人の視点で会社を見ています。投資対象の会社とセミナーをやれば、企画の段階からどのように反応するのかなども見えてきます。同じ業種でも、積極的にセミナーに参加する会社もあれば、どうも硬くなっている会社もあって、なかなか面白いです。

守屋:セミナーのお誘いだけで、企業の体質が見えてしまうというのは怖い話ですね。

渋澤:何でもすぐぱっと決め、「いいですよ」と反応が早い会社は、経営の意思決定のスピードも速いということが分かります。

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