3万5000部のベストセラーとなった『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』。人類の知の進化を「宗教と神話」「哲学と思想」「経済と資本主義」という3つの軸から読み解き、人類の歴史に残る200冊を紹介する壮大なブックガイドだ。著者である堀内勉氏に『天才読書 世界一の富を築いたマスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊』を執筆した山崎良兵が読書をテーマにインタビューする連載の第2回では、堀内氏が『読書大全』を執筆した理由をさらに掘り下げて聞いた。
前回の記事「安定した仕事と家庭を失い“絶望の淵”にいた僕を救ってくれた本」では、堀内さんが日本興業銀行を辞めて家庭も失い、心を病むような絶望の中で出逢った本について語っていただきました。今回は『読書大全』をなぜ書いたのかについてもっと詳しくお聞きしたいと思います。
堀内勉氏(以下、堀内氏):興銀を辞めて、いったん外資系のゴールドマン・サックス証券に転職しましたが、最終的には金融業界から身を引くことを決意しました。そもそも私は情熱があって金融業界に入ったわけではありません。人生をもう一度やりなおそうと考え、実体がなくつかみどころのない金融ではなく、実体があり仕事の成果がよく目に見える不動産デベロッパーに転じることにしたのです。
森ビル・インベストメントマネジメントの代表取締役社長を経て、2007年に森ビルの取締役専務執行役員CFO(最高財務責任者)に就任しました。しかし森ビルの森稔社長(当時)と一緒に都市開発の大きな夢を見て、長期的なビジョンに基づいた仕事ができると喜んだのも束の間で、再び金融危機に直撃されることになったのです。
1990年代後半の日本の金融危機から10年経ち、私自身もようやく苦しみから抜け出せたと思ったときにリーマン・ショックが襲ってきました。森ビルも資金繰りに窮して、不動産の含み益はあっても、現金が足りないといった苦境に追い込まれました。
二度の金融危機に直面して強く感じたのが、我々に執拗にまとわりついて離れない「金融」の正体は何かという疑問です。どうして同じことが繰り返されるのか。私たちが身を置いている資本主義とはいったい何なのかという根源的な疑問が湧いてきました。
そこで「日本資本主義の父」ともいわれる渋沢栄一の玄孫(やしゃご)である渋澤健さんたちと「資本主義研究会」を立ち上げました。「資本主義は人間の本性にかなっているのか?」「資本主義は人間を幸せにするのか?」といった疑問を追究してきました。10年ほど活動を続けており、その成果は『資本主義はどこに向かうのか』という本にまとめています。

資本主義の本質を徹底的に理解したいと考えるのは、物事の根源を知りたいという堀内さんの探究心の強さの表れですね。確かにリーマン・ショック以降、資本主義の在り方が厳しく問われるようになりました。例えば、格差問題についてはトマ・ピケティが『21世紀の資本』で、「資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す」と指摘しています。日本でも斎藤幸平が『人新世の「資本論」』で資本主義が抱える構造的な問題に鋭く迫っています。
堀内氏:資本主義と並行して個人的に研究してきたのが、宗教や哲学、思想です。客体としての資本主義の研究をするだけではなく、それを受け止める主体としての自分自身の問題に正面から取り組まなければならない、そのためには宗教や哲学や思想を真剣に学ばなければならないと思うようになりました。
こうした経験を経て、私は何かにとりつかれたかのように読書をするようになりました。そして自分自身の備忘録も兼ねて、フェイスブックに読後感を公開するようになります。それが予想外に好評で、書評サイト「HONZ」のレビュアーとしてお声がかかります。雑誌などでも書評を頼まれるようになり、いつの間にか「書評家」という肩書きも持つようになっていました。
そして、これまでの私自身の読書体験を語るとともに、読書の大切さを今のビジネスリーダーにも、ぜひ伝えたいと思い、人類の歴史に残る多数の名著を取り上げた本を出版したいと思ったのです。
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