牛窪氏:柳川範之先生との対談(※1)でも話題になったのですが、おっしゃるとおりZ世代の起業家は、身近な人たちとの温かい人間関係や、会社を興す意味を重視しているように感じました。
消費の現場でも、あえてフェアトレードのチョコレートを買ったり、メルカリのようなフリマアプリで「誰かがはけなくなったデニム」を買って、クッションとして、よみがえらせたりする。また、Z世代に「ユーザー参加型」の商品やサービスが売れるのも、単にテクノロジーの進化がそれを可能にしただけでなく、そこに意味合いや良好な人間関係があればこそ、なのでしょうね。
デジタル化社会の商品やサービスは完成したように見えても終わりがない
尾原氏:そう思います。コトラーは「マーケティング4.0」(17年発表)において、顧客がブランドを通して「自己実現」できることが大切だと説きました。同時に、デジタル化を前提としたマーケティングミックスの概念を「4C」と表現しましたが、そのCのうちの1つが「Co-creation(共創)」、つまり「共に創る」ことの重要性だったのです。
牛窪氏:そういえば以前、先のトークルームでご一緒した際に、尾原さんは実業家のけんすう(古川健介)氏が打ち出す「プロセス・エコノミー」に、触れていましたよね。商品やサービスが完成するまでの過程も含めて、ビジネスとして作り込む戦略だと思うのですが。
尾原氏:はい。そもそもデジタル化社会の商品やサービスは、常に新たな技術や消費者ニーズを取り込んで、どんどん進化を続けるので、完成したように見えても終わりがない。「永遠のβ版」だから、進化し続ける過程を、長く見せられるんですよ。
牛窪氏:だからこそ、そこに消費者が介在する余地もあるし、彼らも過程そのものを楽しめる。さらにそれがSDGsや社会貢献につながれば、先の自己実現欲求も満たせますね。
尾原氏:僕は、お笑いタレントのキングコング西野(亮廣)氏が以前、提言した「レストラン型からBBQ(バーベキュー)型へ」の理論が好きなんです。すなわち、今後は多くのサービスが、「プロが作った完璧な料理を出すサービス(レストラン型)」から、「お客さんと一緒になって、お客さんが食べるものを共に作り上げていく(BBQ型)」ようになる、との考え方。
あえて完成形ではないBBQ型を提供することで、Z世代の「良好な人間関係」や「意味合い」欲求も、刺激できると思うのです。
牛窪氏:そういえば、やはり以前トークルーム(※1)でご一緒した、Z世代の女子大生マーケッター(1998年生まれ)も、タレントで実業家のゆうこす(菅本裕子)氏などを例に挙げ、「ファンと一緒になって、コツコツとブランドを創り上げていく人や商品に、強くひかれる」「自分の声が生かされるかもと想像するだけで、楽しい」とおっしゃっていました。「共創」と「永遠のβ版」は、Z世代の消費に欠かせないキーワードと言えそうですね。
2020年夏、ある朝起きたら、21歳の大学生になっていた! あなたならどうしますか? 物語とキーワードでwithコロナの消費潮流を読む。つながり重視だけど、「密」はイヤ。なりたい職業がないから「起業」。憧れるのは「一体感」と「昭和の家族」。コロナ禍の若者たちは日々をどう過ごし、何を消費し、将来をどう考えているのか? 世代マーケティングの第一人者が、父親と息子の入れ替わり物語とキーワードで、「Z世代」の素顔を読み解きます。
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