現在、大学生~社会人2、3年目の若者は、「Z世代」(1990年代後半~2000年代序盤生まれ)と呼ばれる。デジタルネーティブよりさらに進んだ「SNSネーティブ」世代でもある彼らは、仕事や消費の現場において、どのような価値観を抱いているのか。2回目の今回は、2020年12月、『若者たちのニューノーマル』(日経プレミアシリーズ)を出版したマーケティングライターの牛窪恵氏が、ITジャーナリストで楽天・元執行役員の尾原和啓さんと、Z世代を巡る「デジタルと若者消費」について考える。

牛窪恵氏(以下、牛窪氏):私はZ世代をテーマにした先の本で、彼らを「SNS世代」と表現しました。尾原さんも、彼らとデジタルメディアの関係性に注目していますね。

尾原和啓氏(以下、尾原氏):はい。「Z世代」の由来は、アメリカの「Generation Z」です。アメリカは4年に1度必ず大統領選挙があって、政権や政策が大きく変わる可能性があるし、日本とは人種問題をはじめ社会環境も違うから、一概に同質には語れない。ですが、デジタルメディアの進化は共通する点が多いでしょう。

 iPhoneを例に取ると、アメリカでは2007年に、日本では08年に初めて発売されました。Z世代の最年少者(現17歳)は4歳のとき、既にiPhoneをいじっていた可能性があるんです。

<span class="fontBold"><牛窪恵氏・プロフィル></span><br> マーケティングライター。修士(経営管理学/MBA)。世代・トレンド評論家。立教大学大学院・ビジネスデザイン研究科客員教授。大検合格後、1991年に日本大学芸術学部・映画学科(脚本)を卒業。大手出版社に勤務したのち、2001年にマーケティングを中心に行うインフィニティを設立、同代表取締役。著書やテレビ出演を通じ、「おひとりさま」「草食系(男子)」などの流行語を世に広めた
<牛窪恵氏・プロフィル>
マーケティングライター。修士(経営管理学/MBA)。世代・トレンド評論家。立教大学大学院・ビジネスデザイン研究科客員教授。大検合格後、1991年に日本大学芸術学部・映画学科(脚本)を卒業。大手出版社に勤務したのち、2001年にマーケティングを中心に行うインフィニティを設立、同代表取締役。著書やテレビ出演を通じ、「おひとりさま」「草食系(男子)」などの流行語を世に広めた

牛窪氏:その5年後には、SNSも浸透しましたよね。Z世代は小学生の頃に、スマホで常時接続が当たり前で、さくさくと画像を送り合ったり、LINEに投稿したり、オンラインゲームを楽しんだりしていた可能性があります。また、私がZ世代の女子を取材した際には「中学生の頃から、海外セレブのインスタ(グラム)をフォローしてます」や「高校生のときから、アメリカの人気モデルが手掛けるコスメブランドの通販サイト(英語版)に登録してました」といった声が、続々と飛び出しました。

尾原氏:スマホやSNSのネーティブは、テキストより画像や動画が中心だから、悠々と国境を越えるんですよ。先日、牛窪さんと音声SNSアプリのトークルームで一緒に話したとき(※1)も、TikTokでフォロワーが60万人もいるというZ世代の女性(1999年生まれ)が、「海外のフォロワーさんたちから、『日本語を教えてほしい』と言われたので、彼らの“お役に立ちたい”と思って、覚えやすい日本語を披露するようにした」とおっしゃっていた。印象的でしたね。

※1=2021年2月23日・音声SNSの「クラブハウス」における、柳川範之氏(東京大学大学院教授)、牛窪氏、尾原氏らの座談。

牛窪氏:まだ20代前半なのに、しかも海外の方々のために“お役に立ちたい”って、すらすらと……。私が若い頃には、とても言える言葉じゃなかった。しかも、コスパだけじゃなく「タムパ(タイムパフォーマンス/時間対効果)」も意識しながら、複数のデジタルツールやアプリをマルチで使いこなす印象です。

<span class="fontBold"><尾原和啓氏・プロフィル></span><br> ITジャーナリスト、フューチャリスト。京都大学大学院工学研究科を修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニーやリクルート、Google、楽天の執行役員などを経て現職。シンガポールやバリ島をベースに活動し、ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」にも従事する。著書に、『アフターデジタル』(日経BP/共著)、『仮想空間シフト』(MdN新書/共著)ほか多数(写真:干川修)
<尾原和啓氏・プロフィル>
ITジャーナリスト、フューチャリスト。京都大学大学院工学研究科を修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニーやリクルート、Google、楽天の執行役員などを経て現職。シンガポールやバリ島をベースに活動し、ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」にも従事する。著書に、『アフターデジタル』(日経BP/共著)、『仮想空間シフト』(MdN新書/共著)ほか多数(写真:干川修)

尾原氏:まさに自然体で、自分の手足のように操れる。すぐ上のミレニアル世代(現20代半ば~40歳)と比べても、「心のOS」が違うんです。僕はミレニアル世代と比較するうえで、Z世代とSNSの関係性を、アメリカでバズワードにもなった「JOMO」という言葉でよく表現します。

牛窪氏:Z世代が「JOMO」なら、ミレニアル世代は?

尾原氏:「FOMO(Fear of Missing Out)」です。直訳すると「見逃すことの恐怖」。対するJOMOは「Joy of Missing Out」の略、「見逃すことが喜び」との概念。ミレニアル世代(FOMO)は、四六時中ネットやSNSにつながっていないと「取り残される」と恐れを感じる傾向がありますが、Z世代(JOMO)は、初めから「すべてに目配りするなんて無理」と分かっている。むしろ「いま偶然得られた、この情報やつながりを楽しもう」とポジティブに捉えるんです。

牛窪氏:すごくよく分かります。私ももう10年以上、20代への調査を続けていますが、LINEが普及した直後(2012~13年ごろ)は、「SNS(LINE)疲れ」といった言葉がはやりました。「常に友人のSNSをチェックしていないと落ち着かない」「『既読スルー』はヤバイから、早くレスしないと」と強迫観念に駆られる声も多かった。

 でも、18年ぐらいから「Zenly」(ゼンリー)という位置情報共有アプリが、女子高生(Z世代)を中心に人気を集めるようになりました。スマホを通じて「いま、この瞬間」に友人のAさんやBさんとつながれていることが、ハッピーで楽しいと言うのです。インスタグラムの「ストーリーズ(24時間で消える投稿)」も、似たニュアンスだと感じます。

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