藤巻氏:なるほど。ただ、私からするとニューヨークで500ドル、日本円にして5万数千円でホテルに泊まれるのは、円が高すぎる水準にあるおかげだという気がします。経済力を比べると本来なら10万円、20万円くらい払わねば泊まれないはずだと思うのです。円の実力で言えば、もっと円安、例えば1ドル=200円が妥当でしょう。米国の成長に比べて、日本の経済は停滞しているからです。1ドル=200円なら1泊500ドルのホテルは日本円で10万円です。情けないことではありますが、貧しくなった国の国民が豊かな国のホテルに泊まるのなら自国通貨建てで大枚を必要とするのが当たり前です。

 米国の土地や株はすごく値上がりしています。日本ではバブル期の1989年、日経平均株価が3万8915円のピークに達しました。2月15日には30年ぶりに3万円を超え、異常な値上がりだと言われますが、ピークとくらべると、まだ7割から8割です。しかしアメリカは1989年12月末は2753ドルですから、現在は11~12倍にもなっています。

 土地も同様で、日本は当時の価格に戻っていませんが、米国は数倍になっている地域も珍しくない。かつて日本がバブル期に経験したように、土地と株が上がると資産効果で景気は持ち上がるのです。

 私から見ると、円はまだ高い。円安にするというよりは、実態に合わせた為替の動きをする仕組みをつくらなくちゃいけないと思います。それもあって、僕はずっとここ20年間、30年間ドルを買えと言い続けています。外れている、外れているとずいぶん言われていますが(笑)。もっとも、この30年間「強い国のリスク資産(=株や不動産)を買え」と主張し、実践してきました。円高が進み、ドルが対円で40%やられたところで、株価が11倍になっていれば円貨では6.6倍なのですがね。外れたほうだけ非難されるんです(笑)。

相場氏:現在の為替は実態を反映していないというお考えなのですね。

藤巻氏:そうです。強い通貨を望む声もありますが、国力が上昇すれば通貨は強くなるのですから、望むべきは国力であり、通貨ではないはずです。実力がないのに5段階評価の通信簿で最上級の5が付けば弊害しかないのです。実力を高めて評価5をもらう。それだからこそ親は通信簿の5をほめるのです。つまり実力をほめてくれるのです。教師に賄賂を贈って5をもらってもほめてくれません。

 ところで中国元を見ると、改革・開放政策への転換のあった1980年の1人民元151円から現在は1人民元約16.7円になりました。一方でGDP(1人当たりの名目GDP)は安い人民元を武器として世界の工場になり大躍進しました。460元(1980年)から7万3000元(2020年)になっています。約160倍ですね。GDPが160倍になれば、通貨が9分の1に下がっても実質14倍豊かな生活ができるのです。通常、通貨が9分の1になれば、海外旅行などできませんが、コロナ禍前に中国人旅行者が大勢、日本にやって来ていたのは、これが理由なのです。

緊縮財政で暮らしは苦しくなっても、再浮上の道はある

藤巻氏:もしも、日本の財政が破綻したら、そこで改めて資本主義になればいいと思うのです。3~4年は厳しい時期が続くと思いますが、希望はあります。これだけ頭がよくて勤勉な国民は、そういないからです。きちんとした資本主義国家の仕組みさえつくれば、必ず再浮上、いえ“大浮上”できると思います。こんなに優秀でまじめで勤勉な国が30年間、世界でダントツのビリ成長って、おかしい話です。

相場氏:私も日本人には希望があると思います。今の状態が続くのは、あり得ない。さらに、若者にはもっとチャンスが与えられるといいと思います。携帯電話料金を下げるとか、そういう話ではなく、正規労働者と非正規の違いをどうするのか、など、国のシステムとしても考えるべきことはたくさんあります。

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