相場氏:現在の状態から日本が財政再建に取り組むとなると、相当な時間がかかると思います。その間、何が起こるか、一般の人の生活がどうなるのかが気になります。

 コロナ禍の影響もあり、日本では生活に困窮する人も増えています。私は都心の新宿区に住んでいますが、近所にハンバーガーチェーンの店があります。24時間営業なのですが、朝、犬の散歩で通りかかると、寒い中、20歳前後の若者が、ウーバーイーツのロゴが入ったバッグを横において、テーブルに突っ伏して寝ています。稼働前なのか、オーダーに備えているのでしょう。その近くにある公園では徐々にホームレスの姿が増えています。

 片や、都内の六本木などでは、30代くらいのグループがフェラーリなどの高級車を乗り回しているような、バブル時代を思わせる光景も目にします。いつから日本はこんな国になったのかと考えてしまうのです。

藤巻氏:世界的に格差が広がっているといわれますね。しかし、ほかの国と比べると日本の格差はまだ小さいと思います。実際にいろいろな国に行って見てみれば分かりますが、日本にはとんでもない金持ちも、とんでもない貧困層もいないのです。また格差発生の理由が、日本は他国とは違うというのが学者たちの通説です。他国は金持ちが富を独占することによって格差が拡大したが、日本は中間層が消えたといわれます。

相場氏:つまり、中間層が下に落ちたということですね。

藤巻氏:そうです。そのようにして発生した格差を、富裕層を引きずり下ろすことによって解消しようとしても、皆が平等に貧乏になるだけです。サッチャー元英首相の言うところの「妬み」という人間で最も卑しい品性を発揮しただけにすぎなくなるからです。やる気のある人が海外に逃げてしまうか、全員がやる気を失う結果となってしまいます。今、日本では格差解消のために、パイをどうやって切り分けるかということばかりに議論が集中している印象がありますが、パイを大きくすることを考えなければいけないんじゃないでしょうか。

 そして日本の最大の格差は、世代間格差です。これほど国に借金がたまっていたら、僕ら高齢者はもう死ぬからいいかもしれないけど、若者たちは、国の借金を返すため、税金を払うために、働いて生きていかなくてはならない。そんなすさまじい格差はないだろうと思います。

(写真=北山宏一)
(写真=北山宏一)

世界の中で貧しくなった日本

相場氏:日本が世界の中で貧しくなっているという実感もあります。『Exit イグジット』の中に、古賀という裏のコンサルタントがニューヨークに行く話が出てきます。3年前の私の実体験なのですが、景気が悪いといわれている中、マンハッタンで日本のビジネスホテルよりも小さい部屋が1泊500ドルしました。宿の隣には車が行き交うホランドトンネルがあり一晩中うるさい小部屋です。レストランも日本の2倍、3倍すると感じました。

 4年前に香港に行ったときも現地の高級レストランにリムジンがずらりと並ぶ光景を見て日本に帰ると、さびれた印象がありました。つくづく国力が落ちていると感じました。

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