「革新」を遂行する過程で必ず生じるのが「失敗」

 今回の拙著では、19世紀の半ば、欧米列強の植民地化政策に抗(あらが)いながら、近代国家の仲間入りをめざした人々──21世紀の今日にもつながる企業を創業・承継した人々──は逆境・苦難をどのように乗り越えたかを、その分岐点を中心に集め、分析したものである。

 歴史学にいう「起業家史学」(entrepreneurial history)の重要なテーマでもあった。

 経済学者ヨーゼフ・シュンペーターの理論を借りれば、「革新(イノベーション)」であり「創造的破壊(クリエイティブ・ディストラクション)」と名づけられた、次の5つの分類が骨格となっている。

1.新製品あるいは新品質製品の生産
2.新生産方法の導入
3.新市場の開拓
4.原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
5.新しい組織の実現

 この「革新」を遂行する過程で、かならず生じるのが失敗であった。否、起業・創業とは、噴き出す失敗との闘いといえるかもしれない。

 起業家、創業者となり得た人々は例外なく、失敗というマイナスをプラスに転じることのできた人々であった。失敗の反対は成功ではない。失敗の反対は何もしないこと、動かないことである。失敗の延長線上にこそ、成功はある。

 ただし、乗り越えられてこその成功であった。

 「成功とは意欲を失わずに、失敗に次ぐ失敗を繰り返すことである」(イギリスの首相チャーチル)

 「失敗に達人などというものはいない。誰でもみな失敗の前には凡人である」(プーシキン著『大尉の娘』)

 「人生に失敗がないと、人生は失敗する」(精神科医・斎藤茂太<しげた>)

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