終身雇用制度の弊害

藤巻氏:小説『Exit イグジット』には、金融政策に疑問を持つ人たちが、日銀を立て直そうとする話が書かれていますね。

相場氏:あくまで小説の話ですが(笑)。

藤巻氏:分かっています(笑)。読んだときに仮に米国でFRB(連邦準備制度理事会)が、明らかに中央銀行として問題のある行動を取ったら、そこで働くバンカーはどうするかと考えました。おかしい、間違いだと判断したら、文句を言って止めようとすると思うのです。米国ならば、仕事を辞めてもJPモルガンとかゴールドマン・サックスに転職すればいいのですから。

 日本は終身雇用制度があるがゆえに、勤務先に問題があっても、働く人は忠誠であろうとします。退職した後までそれが続きます。しかし、これではセントラルバンカーがセントラルバンカーとしての矜持(きょうじ)を持ち続けられないと思うのです。

 私は終身雇用制度には大きな問題があると思っています。その制度があるがゆえに、政府は企業を守ろうとします。存続の見込みのない中小企業に融資を続ける中小企業金融円滑化法(通称、モラトリアム法)などというものは、米国だったら導入しないと思います。その企業が倒産して働く人が失業しても、労働市場が流動化していれば、新しい仕事を見つけやすい。企業よりも個人をサポートすればいいと思うのです。

 ところが日本では、企業を守ろうとして、本当は退場すべき企業まで支援してしまい、いわゆるゾンビ企業を生み出してしまう。コロナ禍でも、企業が潰れると働く人の生活が守れない、次の仕事も見つからない、だから企業を守る、という支援を行っています。

相場氏:どの業界を優先して支援するか、誰に支援の仕組みを任せるかが、政治の利権になっています。

藤巻氏:おっしゃる通りです。終身雇用制度が続いた結果、働く人は企業に頼る、そして企業も頼れないとなると、国に頼ろうとする。しかし今は、その国が一番危ないのです。中央銀行が危ないのですから、自衛する以外ありません。できるだけ正確な情報を得て、危機意識を持つこと、少なくとも勉強した人は自衛できますよね。

 一方、中央銀行である日銀については、仮に債務超過になった場合は、別に新しい中央銀行をつくり、そこに機能を移すしかないのでは、と思っています。

(写真=北山宏一)
(写真=北山宏一)

(第3回に続きます)

「世界中に火種はあるが、一番ヤバいのは日本だ」!
日本の金融政策に切り込んだ相場英雄氏の最新作『Exit イグジット
書籍、電子書籍同時発売

 月刊誌「言論構想」で経済分野を担当することになった元営業マン・池内貴弘は、地方銀行に勤める元・恋人が東京に営業に来ている事情を調べるうち、地方銀行の苦境、さらにこの国が、もはや「ノー・イグジット(出口なし)」とされる未曽有の危機にあることを知る。

 金融業界の裏と表を知りつくした金融コンサルタント、古賀遼。バブル崩壊後、不良債権を抱える企業や金融機関の延命に暗躍した男は、今なお、政権の中枢から頼られる存在だった。そして池内の元・恋人もまた、特殊な事情を抱えて古賀の元を訪ねていた。

 やがて出会う古賀と池内。日本経済が抱える闇について、池内に明かす古賀。一方で、古賀が伝説のフィクサーだと知った池内は、古賀の取材に動く。そんな中、日銀内の不倫スキャンダルが報道される。その報道はやがて、金融業界はもとより政界をも巻き込んでいく。

 テレビ・新聞を見ているだけでは分からない、あまりにも深刻な日本の財政危機。エンターテインメントでありながら、日本の危機をリアルに伝える、金融業界を取材した著者の本領が存分に発揮された小説。

 果たして日本の財政に出口(イグジット)はあるのか!

【内容紹介】
日本の財政赤字は巨額に膨らみ、世界でも最悪の状態にある。日銀が国債や株式を爆買いすることでごまかしているが、いつ日本売り(株・債券・円の暴落)が起きてもおかしくない。こんなときは一般的な投資法は通用せず、日本売りに備えた資産運用法こそが有効である。そこで本書では基本的な金融マーケットの知識と仕組みを解説し、個人が簡単に活用できる利益のあげ方を指南。景気に関係なく、稼げる方法が身につく!

金融知識は一生モノの武器になる!
・先々の金利はどう決まるのか
・変動金利型住宅ローンを固定型に変えるのは得策
・マーケットの金利を予想する
・金融先物市場を活用して稼ぐ
・国債利回りは、Xデイに備える最重要指標
・金利上昇期にうってつけの債券先物
・今、株を買うべきか売るべきか

この記事はシリーズ「Books」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

ウェビナー開催 成田悠輔×安田洋祐 激論!「ビジネス+経済学」

 米グーグルなど最先端企業で経済学者の採用が相次いでいます。最新の経済学は様々なビジネス活動を遂行する根拠となり、確実性を高めることが実証されています。一方、日本に目を向けてみれば、仕事場でも「本当は防げる失敗」が繰り返されているのが実情です。

 日経ビジネスLIVEは日経BOOKプラスと共同で、7月19日(火)20:00~21:00に「気鋭の経済学者が激論『経済学はビジネスに役立つか?』」と題して、ウェビナーをライブ配信する予定です。登壇するのは米イェール大学助教授の成田悠輔氏と大阪大学大学院准教授の安田洋祐氏。本当に役立つ経済学を、ビジネスに取り入れるにはどうすればいいか。経済学の活用を通じて企業はどんなメリットを得られるのか。気鋭の経済学者による議論をお届けします。

■開催日:2022年7月19日(火)20:00~21:00(予定)
■テーマ:成田悠輔×安田洋祐 気鋭の経済学者が激論「経済学はビジネスに役立つか?」
■講師:米イェール大学助教授・成田悠輔氏、大阪大学大学院経済学研究科准教授・安田洋祐氏
■モデレーター:エコノミクスデザイン共同創業者・代表取締役・今井誠氏
■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料(事前登録制、先着順)。

>>詳細・申し込みはリンク先の記事をご覧ください。